Dr.森田の医療・介護ブログ

地域医療・家庭医療の医師&医療経済ジャーナリスト、Dr.森田が綴る医療・介護のブログです。







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本当に危険?レバ刺し・鳥刺し【医師直伝】〜実は少ない本場・鹿児島県民の食中毒!大切なのは「菌」ではなく「人」〜

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こんにちは、森田です。

実は今年の5月、我々の健全な食生活を脅かすかもしれない重大な発表がありました。

 

 それがこちら ↓ ↓

www.asahi.com

 

この記事、大雑把に言いますとこういうことです。

 

◯鹿児島県は、この5月(2018年)に「生食用食鳥肉の衛生基準」(注:これは鹿児島・宮崎にしかない独自の基準です)を改正し、鳥の「肝臓」を生食用から除外した。

◯改訂の理由は、「肝臓からのカンピロバクター検出率が高く、現状では微生物コントロールが困難で生食の安全性が担保できない」ため。県の担当者は「調査したほとんどの鶏の肝臓から、カンピロバクターが検出された」と。

◯また、(注:全国的に?)生や生焼けの鶏肉によるカンピロバクターの食中毒が多発しており、昨年の食中毒では最多原因。多くのケースで鶏刺しが問題となっている。(注:つまり、「レバ刺し」だけでなく「鳥刺し」も危険視している?)

◯厚労省は加熱用鶏肉を使った生食に対する対策を強めつつあり、今年3月、鶏肉が加熱用であると知りつつ生食メニューを出して食中毒を繰り返し発生させるなど悪質な飲食店には、食品衛生法違反で告発するよう全国の自治体に通知を出した。

(上記記事より引用。注は筆者)

 

 

 

 

 これ、あまり報道されませんでしたが、実は我々にとっては結構大きなニュースだと思います。なぜなら、(今回のターゲットは「鶏の肝臓の生食=レバ刺し」ですが、)なんとなく静観していると、「牛レバ刺し」のように、「鳥刺し」までもが禁止になってしまうことだって想定できるからです。

 

え?鹿児島県民のソウルフードにして

 我らが県民食「鳥刺し!」がご禁制に!?

 

もちろん今のところ全然問題なく食べられるのですけどね……ただ上記記事のように、国としてはカンピロバクター食中毒が多い「鳥の生食」を問題視する動きもあるようで、近い将来、本当に「ご禁制」になるなんて話も絶対にない、とは言えないような気がします。

 

なぜそんな気がするのか、と言いますと……。

 

実は、現在「牛レバーの生食」は法律で禁じられていますが、この「ご禁制」の発端は記憶に新しい2011年の「焼肉チェーン店におけるユッケによる腸管出血性大腸菌O111感染で5人が死亡」という事件。

 

あれ?ユッケが原因なのに、なんでいま「牛レバ刺し」だけ禁止になってるの?いまでもユッケ普通に食べられるし!

 

この辺りは以下、感染症診療の神様=岩田健太郎教授(神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野・教授)のご著書に詳しいのですが、

 

 

 

 ま、一言で言うと、「牛レバーは腸管出血性大腸菌がどんなに検査してもやっぱ検出されるので」ということらしいです。でも実は、腸管出血性大腸菌って、生レバーだけでなく、馬刺しからも牛肉の刺し身からも、生野菜・生の果物からも感染もするんですけどね。その辺すっ飛ばして、実は死者も殆ど出ていない、でも以前から「こいつは怪しい」と睨まれていた「牛のレバ刺し」が犯人扱いされ「ご禁制」に。で、問題を起こしたユッケは「無罪放免」、今でもレストランで出てくるよ、と(笑)。こういうのをダブルスタンダードといいますが、ま、詳しいところは岩田先生の本を読んでみてください。(ちなみに、ユッケも牛レバーも生野菜も感染リスクはゼロではありませんが、決して高いものではありませんし、死亡例もほぼありません。)

 

 で、我が愛する「鳥刺し君」は?というと、現状のところ、「限りなく怪しい!」と国から疑いの目で見られている段階。なのでもし今後、何か突発的な、「ワイドショーを賑わすような事件」でも起きてしまえば…いつ「鳥刺し君がワイドショーで吊し上げられ、犯人扱いされてもおかしくない!」……そんな状況でもあるのですね……恐ろしい!

 

では!我々は、この問題にどう対処すべきなのか?「鳥刺し」君を愛する我々は、彼を守るためにいま何をすべきなのか!? 

 

以下でこの点を論じてみたいと思います。

 

 

 

 

 

実は少ない本場・鹿児島県内の食中毒患者数! 

 

鹿児島県外の皆さんにはあまり想像できないかもしれませんが、「鳥刺し」は、鹿児島県民にとってなくてはならないものです。 当たり前の存在すぎて、もうそれは「空気」ようなものなのです。

 

全国各地のご当地名物というと、たとえば宮崎の「冷や汁」とか浅草の「雷おこし」とかありますが、でもそういうのって、日常的に食べるものか?というと、意外にそうでもないものも多いと思います。

 

しかし!

鹿児島県民の「鳥刺し食べ頻度」は半端ない!

 

頻度で言うと1年に1回とか、月に1回とかそういうレベルではなく、もう、日常的に食べてるんですね。

その証拠がこちら。

 

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これはある日のスーパーのワンシーンですが、

なんと上段・中断・下段・最下段の4段全てが鳥刺しのみ!

 

これは決して特別なスーパーではなく、鹿児島県内のスーパーなら100%こんな感じです!(…言いすぎてたらゴメン(笑))

 

しかもスーパーだけでなく、

街の辻々に小さな「鳥刺し屋さん」がたくさんありまして、

 

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(呼び方は「地鶏」「たたき」「かしわ」などいろいろありますが、結局は「鳥刺し」です。)

 

鹿児島県民、一体どんだけ鳥刺し食ってるんだ!

(ノ`Д´)ノ彡┻━┻

 

 とちゃぶ台をひっくり返したくなるほどなんですね。

 

ん?となると、最初の記事の

「生や生焼けの鶏肉によるカンピロバクターの食中毒が多発」

 

が事実なら、これだけ「鳥刺し」を食べまくっている

鹿児島県民の食中毒はさぞ多いでしょうね〜!

と予想されます。

 

で、厚生労働省のデータを調べてみました。その結果がこちら。

(上は食中毒全体のグラフ。下はその中でも今回懸案のカンピロバクターが原因のもののグラフです。食中毒の中にもカンピロバクター以外の菌、つまり黄色ブドウ球菌とかウェルシュ菌とかそういうのも含まれていますので。)

 

 

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厚生労働省・食中毒統計調査・第2表食中毒事件・患者・死者数,病因物質・都道府県-保健所設置市及び特別区別より筆者作成

www.e-stat.go.jp

 

 

 

 

 

 

あれ?鹿児島県民…

 

あれだけ鳥刺し食べてるのに食中毒少なっ!

( ´∀`)bグッ!

 

 

ちなみ上のグラフは「人口あたり」でみてますが……

でも「鳥刺しを食べる頻度の高い」鹿児島県民と、たまに居酒屋とかでしか食べない東京都民を単純に「人口あたり」で比較しても意味ないのかも。もし仮に「鳥刺し摂取回数あたり」とか「生食用精肉出荷量あたり」とかを調べることが出来たら……多分もう鹿児島県民の患者数は圧倒的に低いでしょうね。


ちなみに、鹿児島県内の食中毒による死亡例はゼロです。僕が調べたこの期間はもちろん、それ以前もずっとゼロです。

 

…ん?記事には「生や生焼けの鶏肉によるカンピロバクターの食中毒が多発」とありましたが……鹿児島は別なのかな?

 

 

実は、そうなのかもしれません。というのがこちらの理由。

 

 

 

 

鹿児島の鳥刺しは独自の厳しい基準に従って処理されている!

 

そう、実は、鹿児島県(お隣の宮崎県も)には、県独自の厳しい「生食用鳥肉」の処理基準・取扱基準がありまして、それに基づいて加工・処理されているんですね。

 

そもそも、カンピロバクターなどの食中毒の原因菌は、鶏の腸の中に多く生息しておりまして、だからこそ生食用鳥肉の処理に関しては

「内蔵摘出後の腹腔内表面は焼却する」

「 器具の洗浄消毒は,83℃以上の温湯により行う」

「 鳥刺しを処理するまな板及び包丁等の器具は専用のもの、またこれらの器具は洗浄消毒の容易な不浸透性材質」

など、特別に厳しい規則が県によって定められているんですね。

 

鹿児島県「生食用食鳥肉の衛生対策」

https://www.pref.kagoshima.jp/ae09/kenko-fukushi/yakuji-eisei/syokuhin/joho/documents/66345_20180614110024-1.pdf

 

鹿児島県民が、あんなに鳥の生肉を食べてるのに食中毒が少ない理由には、他県にはないこんな食鳥業界の隠れた努力があったのです!

 

 

大切なのは「菌」ではなく「人」

 

ん?そうは言っても……まだ疑問は残ります。

だって、冒頭で紹介した今回の鹿児島県の「基準改定」の理由は、

 

「肝臓からのカンピロバクター検出率が高く、現状では微生物コントロールが困難で生食の安全性が担保できない」

「調査したほとんどの鶏の肝臓から、カンピロバクターが検出された」

 

と言うことでした。

あ〜〜!僕なんかは「レバ刺し(鶏)」を月2ペースで食べてます!(「鳥刺し」は週3ペースですが)。今夜の夕食も鶏のレバ刺しですよ。

じゃ…今夜のレバ刺しにも!いままで食べてたレバ刺しにも!ほとんど「カンピロバクター」がいる or いたのでしょうか!?

 

ま、多分いたんでしょうね(σ・∀・)σ!!

 

「え?医者のくせにそんな危険なことを!

   そんなに気楽に言っていいの!?ヽ(`Д´)ノ」

 

とお怒りの方もおられると思うのですが、……

 

でも僕は医者だからこそ

 

大切なのは「菌」ではなく「人」

 

だということを知っているのです。

 

 

 

以下は上記、岩田健太郎先生の「リスクの食べ方」からの引用です。

 

 ぼくらはばい菌・微生物の情報も重視しますが、微生物の情報だけを見るのは間違っていると知っています。肝臓から大腸菌が見つかるか、という微生物情報も大事ですが、それだけでは片手落ちです。より大切なのは「結局それでどれだけの健康被害が起きたか」です。(中略)

胃酸は食物の消化・殺菌という仕事をしてくれているのです。(中略)胃酸がきちんと作られている健康な人であれば、多くの細菌はそこで殺されていしまします。たとえ胃酸による溶解をすり抜けて、腸管出血性大腸菌が腸に侵入した場合でも病気を起こすとは限りません。他の常在する菌が腸管出血性大腸菌の増殖を抑えるためです。現に僕も無症状の時にとった便の培養(糞便細菌検査)で腸管出血性大腸菌を見つけることがあります。(中略)

 このように、「食べ物に病原体がいる」=「感染症を発症する」ではないのです。現に統計データを見れば感染症の発症者は(特に日本では)少ないのです。厚労省は微生物の情報ばかり見ずに、こういう「人」の要素もきちんと吟味すべきでした。

(以上、「リスクの食べ方」〜食の安全・安心を考える〜 岩田健太郎著から引用)

 

 

そう、実は!

食べ物に病原体がいる=感染症を発症する、ではない

 

のです。

 

世間ではまだまだ「菌」=「悪者」のイメージが強く、「抗菌グッズ」みたいな意味不明なものが流行っていました(今も?)が、実は菌というものは我々の皮膚にも腸内にも「兆」の単位で生息していて、それで我々の命が成り立っている部分もあるのです。

 

食中毒を起こす代表的な菌である「黄色ブドウ球菌」なんて、普通の人の鼻の中とか、そのへんにゴロゴロいる「常在菌」です。じゃ、「黄色ブドウ球菌」全部退治する?

そんなことできるわけありません。

 

みんなが恐れる恐怖の「腸管出血性大腸菌」!これだって実は、生の牛肉・馬刺しだけでなく、生野菜・果物でも調べれば検出されるし、生野菜からの感染例だって結構あるのです。じゃ、生野菜も全部やめにする?

そんなことできるわけありません。

(そういえば、無実の「かいわれ大根」が容疑者に仕立て上げられて、日本中のスーパーからカイワレが消えたこともありましたね(^_^;))

 

 

 

つまり、「ばい菌」とういものは、そこにあるかどうか!

にもまして、それが「病気に至るのか?」が重要なのだと思います。

 

(そういう意味では、免疫機能や腸内細菌の未発達な子供や、免疫機能の衰えた高齢者の皆さんは、控えたほうがいいかもしれません。実際、僕もうちの子供達には食べさせていません。ていうか「食べたい」とも言いませんが(^_^;))

 

であるのなら!

レバ刺しをいっぱい食べている鹿児島県民の「食中毒全体数」も「カンピロバクター食中毒数」も少ない、この状況において!死者もゼロである状況において!「菌があるから」と言う理由で規制をかける、というのはかつての「レバ刺しのご禁制」に似た、「人」の要素を吟味していない政策じゃないのかな?

 

そして、こんな政策が許容されるようであるのなら、それと同じ論調で「菌があるから」という理由で「鳥刺し全体」が規制されてしまうということも、絶対にないとは言い切れないのではないのかな??

と思います。

 

 

いま、「鳥刺し」君を 守るために僕たちがすべきことは、

 

食べ物に病原体がいる=感染症を発症する、ではない

事実、鹿児島県民は食中毒が少ない

 

この2点を全国的に周知してもらうことなのではないかと思います。

 

これが後述の「TKG(卵かけご飯)」クラスに「国民の常識」レベルになったら、「鳥刺し」君の未来も安泰なのではないでしょうか(^^)。

 

 

 

鹿児島の文化「鳥刺し」の安全性をアピールして観光資源に!

 

僕は思います。

 

こんなに素晴らしい食文化があり、しかも食中毒の統計データ的にも申し分ない結果を出している鹿児島県。いやいや、かえってこれを利用しない手はないのではないか?と。

 

安全で新鮮な「鳥刺し」を、鹿児島に来て食べてもらう。

これは鹿児島県にとってこの上ない「観光資源」なのでは?と。

 

考えてみれば、我々が普通に安全に食している「生卵」だって、世界的には「サルモネラ菌が危険!」とされていまして、絶対に食べちゃダメ認定されている国だって、非常に多いのです。

中国の方に聞いたら「生卵をかけたご飯なんて気持ち悪くて食べられない!」と言われたことがあります。実はそれが世界の声なのです。

 

 

参照:

matome.naver.jp

 

日本に来れば安全で安心な、あんなに美味しいTKGが食べられるのに!

世界の人たち、バカですね (^m^)

 

あれ?でもこれって「鳥刺し」君と同じですよね。

 

 

 

そう、食文化というのは、世界各国で多種多様なのです。

 

だからこそ、

 

そこでしか食べられない「安全で安心な食文化」

 

って、 実は計り知れないプライスレスな価値があるのではないかな?

 

と僕は思います。

 

 

TKGに関して言えば、岡山県の美咲町はTKGの聖地として今や大人気。このお店は毎日大行列とのこと。。。

 

参照:

www.tripadvisor.jp

 

 

 

 

いやいや!鹿児島にだって、こんなおしゃれに「鳥刺し」を出すお店だってあるのですよ!

 

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「Mebuki grand」https://goo.gl/maps/jSiiknYP9BG2 の鶏刺し。

 

 

ね? 食べたくなってきたでしょ!?

これを食べたいなら鹿児島に来るしかないんですけどね (^^)。

 

そう、全国の皆さん、ぜひ鹿児島に来て鳥刺し!を食べましょう!

そして、日本の「生食文化」を守っていきましょう!

 

 「生卵」も「お刺身」も食べられない日本なんて、イヤじゃないですか!\(^o^)/

 

 

 

 

…以上、いま僕が考えていることでした。

でもこんな僕の考え方、まだまだ突飛かもしれませんけどね(^_^;)

皆さんはどう思われるでしょうか。

 

 

 

 

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