Dr.森田の医療・介護お悩み相談室

1971年横浜生まれ。経済学部卒後、医師に。夕張市立診療所の元院長。財政破綻で病院がなくなっても夕張市民は元気だったよ!医療費も減ったよ!と論文やTEDxで発表したところ各界から総スカンを食らう。今は鹿児島県で診療・執筆・講演・研究・web発信などをしている。医療経済ジャーナリスト、南日本ヘルスリサーチラボ代表、鹿児島県 参与(地方創生担当)

『滑り台』が街から消える?安全至上主義報道が社会を締め付ける。【公園遊具の撤去・使用禁止問題】

 

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 3月16日、こんな報道がありました。

 

 

あってはならないとても痛ましい事件です。
女の子の一刻も早い回復を願うばかりです。
 

一方、この女の子がどれだけ指を切ったのか、

第一関節などからの大きな切断なのか、

また指の先端の切断で回復可能な軽微なものなのか、

そこまでは報道されていないのでわかりません。

 

ただ、全国放送で

「滑り台で指を切断」

という恐ろしい報道が出たことだけは事実です。

 

普通の感覚をお持ちの方ならこれを見て

「滑り台も、実は怖いものだ」

と思われるでしょう。

事実ツイッターでもこうした反応が多く発信されました。

 

 

 

 

たしかに、事故は恐ろしいもので、

対策と予防は十分にして行かなければならないものです。

 

でも、僕はこの報道には2つの意味でとても違和感を感じました。

 

 

他にもある大きな危険は殆ど報道されない
(ダブルスタンダード)

 

 


まず、なぜならこのような報道の裏で、

もっとたくさんの乳幼児が、

窒息(就寝中の嘔吐などによるもの)

交通事故(自動車事故などによるもの)

溺死(風呂の残り湯の事故など)

などで命を落としているにもかかわらず、

あたかも社会には存在しないかのように、

まったく報道されることがないことです。

 

 

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厚生労働省:平成21年度「不慮の事故死亡統計」の概況:統計表

 

 

 

 もちろん、

 

「犬が人間を噛んでもニュースにならないが、

 人間が犬を噛んだらニュースになる」

 

と揶揄されるような業界ですから、

報道機関サイドにもそうせざるを得ない事情があるのでしょう。

 

しかし、こうした報道が繰り返され、

あたかも「遊具は危険なもの」のような民意が醸成されていき、

その民意を背景に、行政機関が善意で「遊具」を撤去していく…。

 

結果として

 

「滑り台」が街から消える。

 

こんな事態が大いに想定されてしまいます。

 

事実、すでに同様の経緯で

「回転式遊具」は街から消えつつあります。

 

 

乳幼児にとってもっと危険である他のものについてはあえて言及せず、

何か一つの「悪者」を見つけて叩いてしまう……。

これは、物事の本質を見失う

「ダブルスタンダード」の好例ではないでしょうか。

 

 

 

◯安全至上主義は社会を窮屈にする

 

もちろん、安全を求めることは大切です。

でも逆に、安全を求めすぎることへの弊害(デメリット)も

大いに考慮すべきだと思います。

 

例えば、

 

高齢者を誤嚥性肺炎から守るために禁食にする。

 

これは病院医療ではよく行われることですが、

一方で高齢者ご本人の生きがいを奪いかねない、

ただでさえギリギリの状態で生きている方の

「生きる意欲」を奪いかねない…

その結果として「寝たきり」なってしまう…

 

そんな大きなデメリットを持つ行為であることも

我々医療従事者は認識すべきです。

 

事実ぼくは、医師の指示で絶食→寝たきりになった方に

「食べてもいいよ」と言ってあげただけで

劇的に回復された方を何人も経験しています。

 

 

レバ刺しで事故があったからレバ刺しは禁止にする

 

平成24年、厚労省は牛レバーの生食用として販売・提供することを禁止しました。

でも、本当に牛レバーの危険性は国全体で禁止するレベルのものなのでしょうか。

もちろん、リスクはゼロではありませんが…

実はこの件に関して神戸大学の岩田健太郎教授は著書『「リスク」の食べ方 食の安全・安心を考える』(ちくま新書 2012)

のなかでこう言われています。

 

「腸管出血性大腸菌O157:H7による食中毒は、アメリカで毎年6万人以上の患者がでて、2000人以上が入院し、20名が死んでいる病気です。(中略)そいう意味で、年間5名、死者ゼロの被害を出している牛レバー由来の腸管出血性大腸菌感染症を「多い」と認識するのはかなり困難なのではないかと思います。」

 

 

 

食べ物の危険性、と言う意味では、

正月のお餅の方が遥かに危険です。

でもこちらは規制はされません。

これも「ダブルスタンダード」の好例でしょう。

(当然ですが、『餅も規制しろ』と言いたいわけではありません)

 

同じようなことが、遊具でも行われていないでしょうか。

 

先日、ツイッターでこんなツイートが流れてきました。

 

 

 

こんな張り紙も作られているそうです。

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出典:http://netgeek.biz/archives/109843 

 

もちろん安全・安心を求める風潮は、

それ自体は責められるべきではありません、

ただ、そればかりを突き詰めすぎると、

逆に社会にとって不利益になるかもしれない、

ということを僕らは認識すべきだと思います。

 

僕はいつも、

 

「リスクはゼロを目指すものでなく、

 リスクに伴う不利益(と裏にある利益)を考慮して

 上手にマネージメントするものなんじゃないかな?」

 

 と思っています。

 

でも・・この僕の考え方、今の世の中ではちょっと突飛かもしれませんね(^_^;)

皆さんはどう思われるでしょうか。

 

 

 

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