Dr.森田の医療・介護ブログ

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【医師直伝】インフルエンザの新薬『ゾフルーザ』!!【3分で超解説】

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こんにちは森田です。

 

今シーズン(2018-2019)もインフルエンザの季節がやってまいりました。

 

ま、皆様におかれましては、いつもどおりで特に変わったこともなく、普通に「インフルエンザワクチン」も受けていただいておりますこと感謝申し上げます。

 

あ、「変わりなく」という点に置きましては、今年のインフルエンザ周辺状況は一点変化がありますね。それが表題の新薬「ゾフルーザ」です。本日は、これについて、超簡単に3分で分る解説をしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 新薬「ゾフルーザ」の基礎知識。「何が新しいの?」

 

「何が新しいの?」これは、重要なところ。

薬を飲む患者さんにとってもっとも新しい点、それは、

 

「一回飲めば治療終了」

 

これに尽きるでしょう。

 

これまでの薬は、1日2回☓5日間のタミフル(内服)リレンザ(吸入)。唯一「イナビル」は一回のみで終了できたのですが、こちらもリレンザと同じく「吸入薬」で、粉末を気道・肺に吸い込む形式の薬。やはり小さな子供とか高齢者には使いにくい感じでした。その点、今回の新薬は、「一回のみ、しかも内服」なので、患者さんには大きな利便性向上となるでしょう。

 

新薬の構造

 薬の構造なんてたいして興味ないと思いますので、飛ばしたいところですが、一応簡単に。

 これまでの薬(タミフル・リレンザ・イナビル)は、インフルエンザウイルスが体内の細胞内に入り、細胞の中で増殖したあと、その細胞外に出ていくところをブロックしていたんですね。でも、今度の新薬「ゾフルーザ」は、その細胞内での増殖自体をブロックしてくれるとのこと。なので、その効果として以下が挙げられます。

 

 

「ゾフルーザ」の効果

 

新薬を開発したシオノギさんが強調するのは、ここ!

 

ウイルス検出期間が短縮される

 

と言う効果です。

つまり、増殖自体をブロックしてくれるので、インフルエンザにかかってもウイルスが早く体内からいなくなってくれる効果がある。ということですね。これまでのタミフルよりだいぶ短縮されたと報告されています。

(ウイルス検出期間中央値はゾフルーザが約24時間、タミフルが約72時間、偽薬で約96時間)

 

凄い!

 

と拍手したいところですが、意外にそうでもないというデータも。

 

実は、

 

症状が改善するまでの時間はタミフルと大差ない。(偽薬と比較すると24時間程度短縮=タミフルと同じくらい)

 

らしいです。

 

じゃ、意味ないじゃん!

 

と言う声も聞こえてきそうですね。ごもっともです。

ウイルスが早く体内から消えてくれることも大事ですが、患者さんにとってもっと大事なのは早くつらい症状がなくなることですから。

 

そういう意味では、効果は限定的なのかもしれません。

 

 

「ゾフルーザ」のデメリット

 

そう、もちろんデメリットもあります。大体この3つくらいでしょうか。

 

◎価格が高い

 どれくらいかと申しますと、1回の治療あたり

 

■ ゾフルーザ

(1回内服で終了。約4800円 3割負担で約1500円)

 

ちなみにこれまでの薬はこれくらい。

 

■イナビル

(1回吸入で終了。約4300円 3割負担で約1300円)

■リレンザ

(1日2回5日間、全10回吸入。約3000円 3割負担で約900円)

■タミフル

(1日2回5日間、全10回内服。約2700円 3割負担で約800円)

【タミフル(オセルタミビル)は今季からジェネリック医薬品も発売されていまして、こちらは上記の半額(自己負担400円)程度になるようです。】

 

 

 ちなみに以上は薬代だけのなので、実際の窓口での支払いには診療代・検査代などがプラスされます。

 

◎ウイルスの変異

 細菌に対する抗生剤でもそうなのですが、ウイルスは薬(抗ウイルス剤)に対して抵抗力を獲得することがよくあります。これはタミフルでもそうで、いわゆる「タミフル耐性ウイルス(タミフルが効かないインフルエンザウイルス)」が問題となっています。新薬ゾフルーザでも同様のようです。報告によると、

 

ソフルーザを飲んだ人の約1割(小児では2割以上)でウイルスに遺伝子変異が生じるとのこと。

 

で、そうなったばあい、当然といえば当然ですが、ウイルス検出期間がむしろ延長し,症状が改善する期間も長引くようです。1〜2割となると結構高い確率ですね。

 

 

 

◎副作用が出揃っていない可能性がある

 

 新薬というのはなんでもそうなのですが、臨床試験(発売前のテスト段階)ではわからなかった副作用が新たに判明することが多々あります。

 同じインフルエンザの薬、タミフルでも「こどもの異常行動」などが発売後に騒がれました。(異常行動については、そもそものインフルエンザの症状なのかタミフルのせいなのかはよくわからず、結果として今はタミフルの小児への投与制限は解除されています、ただし投与した場合の保護者への注意喚起は続いています)

 

 特に今回の新薬「ゾフルーザ」は、作用機序がこれまでの薬と違うので、副作用についても新しいものが今後判明する可能性は否定できないでしょう。

 

 また、副作用のことを考えると、1回で治療が終了するというメリットはデメリットにもなりえます。タミフルなら副作用が出た時点で内服を中止すれば薬は比較的早く体内からなくなりますが、ゾフルーザの場合1回で治療が終了する=つまり薬が長く体内にとどまり効果が持続するということで、その結果、副作用も長引いてしまう可能性も十分に考えられるからです。

 

 

結局どうなの?

 

 これまで見てきたメリット・デメリットを総合して考えると、一医師個人としての意見は「患者さんからリクエストがあるとかの理由がない限り、今シーズンは処方することはあまりないかな〜」と言うところです。

 

 ま、そもそもインフルエンザの場合、薬がどうこうというよりも、まず

 

◎ワクチンをうつ

 

 で、それでもインフルにかかってしまったら、

 

◎安静・休養・栄養

 

 が大事。

新薬も含めて、インフルエンザ薬の効果は「発熱などの症状を半日〜1日程度早く直してくれる」というくらいの限定的なものです。しかも使うだけ耐性ウイルスが増えるかも…。だったら、しっかりと休んだほうがいいのかな〜、とも思えますね。

 

 

 以上、インフルエンザの新薬「ゾフルーザ」についての3分解説でした。

 

 

 

【おまけ】 

インフルエンザのときの解熱剤はロキソニンなどのNSAIDsは使いにくく、 アセトアミノフェンという薬がよく使われます。特に小児の場合はアセトアミノフェン以外は副作用の危険があり使われません。

実はこれ、病院でわざわざ処方箋をもらわなくても薬局で買えます。

 

◎ノーシンAC(1錠中アセトアミノフェン150mg)

 

 

◎バファリンルナJ(1錠中アセトアミノフェン100mg) 

 

◎小児用バファリンCⅡ(1錠中アセトアミノフェン33mg)

 ちなみに熱は高いほうがウイルスは早く死ぬので下げないほうがいい、というのもまた事実らしいのですが…でも、ご飯も食べられないとか、うなされるほど辛いとか、そういう場合はこうした解熱剤でつらい発熱を抑えながら、自分の中の免疫力の活躍を待つ。というのもまた一つの方法だと思います。

 

 

 

 

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元論文 

Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents.
New England Journal of Medicine 2018; 379: 913-923

 

参考文献:

EARLの医学ノート(EARL先生にはいつも勉強させていただいております!)

drmagician.exblog.jp