Dr.森田の医療・介護お悩み相談室

1971年横浜生まれ。経済学部卒後、医師に。夕張市立診療所の元院長。財政破綻で病院がなくなっても夕張市民は元気だったよ!医療費も減ったよ!と論文やTEDxで発表したところ各界から総スカンを食らう。今は鹿児島県で診療・執筆・講演・研究・web発信などをしている。南日本ヘルスリサーチラボ代表、鹿児島県 参与(地方創生担当)

【漫画で解説】「地域包括ケア」って結局何なのよ! (前編)【本人の選択 ⇔ 家族の安心?】

 

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お悩み相談

 

60代主婦です。最近、田舎で一人暮らしの母(88歳)の物忘れが激しくなってきています。約束をすっかり忘れてしまったり、財布の置き場所がわからなくなって探し回ったり、タマゴがあるのを忘れてまた買ってしまい、冷蔵庫にタマゴが何パックもあったり、そんなことが続いていて心配しています。兄弟の話の中では「今のうちに高齢者施設などに移ってもらったほうが安心」という話も出てきています。長年住みなれた家だし、ご近所さんとも仲がいいので、母は嫌がると思いますが…。こんな時、どうすればいいのでしょうか?

 


登場人物

 

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森田先生:とりあえず何でも診る総合診療(プライマリ・ケア)の医師。40代。

 

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Yさん:2人の子を持つ30代専業主婦。元病院看護師。

 

 

森田「今回は認知症気味?の遠方のお母さんのご相談ですね。」

 

Yさん「娘さんの気持ち、よく分かるわ〜。家族としてはこのまま一人暮らしは不安。施設に入ってもらったほうが安心。…でも、本人はなかなかね〜。」

 

森田「ですよね。日本はこれから怒涛の高齢化社会を迎えるわけですから、今回のお悩みのような事例は、今後もっと増えそうですよね。」

 

Yさん「そうよね〜。」

 

森田「…でも実は、国もキチンと考えてくれているんですよ。最近良く聞く『地域包括ケアシステム』がそれです。」 

 

Yさん「う〜ん、『地域包括ケア』って、たしかによく聞くけど、これいまだによくわかんないのよね。結局何なの?っていっつも思う。」

 

森田「そうですね。そういうご意見よく聞きます。確かに、わかりにくいかも・・。いちおう厚労省はこんな説明をしていますね。」

   

 

 

「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。」

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厚労省のHP「地域包括ケアシステム」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/  

 

 

Yさん「う〜〜ん、『重度の介護状態になっても住み慣れた地域で』ってね〜。そんなこと出来るのかしら。国はこれ、ホントに本気で言ってるの?」

 

森田「本気だと思いますけど…。」

 

Yさん「だって重度の介護の人が家に居たら大変じゃない!家族の負担はどうなるのよ。昔みたいに長男のお嫁さんが介護してくれる時代でもないし。女性だって働きたいし!すべての女性が輝く時代、って国も言ってるじゃない!そんなこと言っときながら、裏ではまた『嫁は家にいて親の介護をしなさい』って言ってるってこと?変なの!」

 

森田「そうですよね。でもYさん、よく見てください。あのイラストの真ん中の『住まい』のところ。『自宅』と『サービス付き高齢者住宅など』が同列で書いてあります。」

 

 

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Yさん「あ、本当だ!」

 

森田「そうなんです。だから、『地域包括ケア』って、『自宅』で家族が介護するっていう話ばかりではないんですよ。」

 

Yさん「そうなんだ。…でもさ、だったら今までと同じじゃない?何が新しいの?」

 

森田「そうですね〜。じゃ、『従来型』と『地域包括ケア型』の違いがよく分かる、実例を元にした漫画があるので、それを読んでもらいましょうか。」

 

Yさん「漫画はいいわね〜。」

 

森田「ではどうぞ。」

 

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Yさん「う〜ん、これ、私は看護師として現実を知ってるから…。たしかに分かる気もする…。でも、複雑な気分ね。」

 

森田「そうですね。…では『地域包括ケア型』いってみましょう。」 

 

 

 

 

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Yさん「先生、これ。うまくいきすぎじゃない?」

 

森田「まあ、実例を元にはしてますが、表現としてはあくまでも漫画ですから(^_^;)。で、Yさん、この2つのストーリーで決定的に違う部分が一つあります。何だと思います?」

 

Yさん「え〜?そうね〜。なんとなく世界観がぜんぜん違うのは分かるんだけど、具体的に何が?って言われると…う〜ん、何だろう。最終的なお看取りの場所も両方とも自宅ではないし…しいて言えば、2つ目の方が、自宅期間が長いわね。そこかな?」

 

森田「ま、それもそうなんですけど、もっと根本的なことが違うんです。それは『本人の選択』を重視するか、しないか、ということです。これ、ついつい忘れがちなんですけど、一番の根っこにあることなんですよ。」

 

 

 

本人の選択 ⇔ 家族の安心

 

Yさん「う〜ん、ま、『本人の選択』が大事なのは分かるけど…。」

 

森田「そうですよね。『けど…』って思う気持ちもわかります。現場では、えてして『ご家族の安心(例えば施設入所)』と『本人の選択(例えば自宅生活)』がぶつかり合うことが多いですもんね。そして、なかなか本人の希望通りに行かないことも多い。」

 

Yさん「そうね・・」

 

森田「そう、でもね。こうして介護で困った時、最初に『本人の選択』を軽んじてしまうと、後々困ることになりがちなんです。」

 

Yさん「どういうこと?」

 

森田「1つ目の漫画の例で言いますと、『ボケが強くなってきて、ご家族の意向で施設に入所した』という話ですよね。この段階で、すでに『本人の選択』にもまして『家族の安心』が重視されています。つまり『人生の選択と責任の主体』が『本人』から『家族』に移行してきているわけです。」

 

Yさん「なるほど。」

 

森田「選択と責任の主体が『家族』ということになれば、ご本人の生活と介護を任されている施設側は、『本人の希望』にもまして『家族の希望』に配慮するようになるのは当然です。」

 

Yさん「なるほどね。で、その流れで、包丁は持たせない、外出は許可制、夜は睡眠薬、っていう流れになっていくわけね。」

 

森田「そうかもしれないですね。施設に入るのか、自宅にいるのか、料理をしたいのか、外出したいのかしたくないのか、デイサービスに行くのか行かないのか、胃瘻にして長生きしたいのか、食べられなくなったら人生終わりと悟るのか…そうした『人生の選択』とその『責任』は本来なら『本人』のもののはずです。しかし、そこを軽んじてしまうと、『選択と責任』の主体は『本人』から『家族』…そして数年後には『施設』にまで移行…、さらに肺炎で救急車で運ばれると今度は『選択と責任』の主体が『病院(医師)』に…と徐々に遠くに行ってしまいかねません。」

 

Yさん「そうね。施設側としても、本人の希望通りに包丁持ってもらって『責任をとれるのか!』といわれたら取れない。だから安全志向に、という傾向はあるわね。」

 

森田「そう。救急病院の医師のように普段からの人間関係のない専門家の立場ならもっとです。より安全志向になります。選択と責任の主体が本人から遠くに行くに従って、より『安全・安心』のみが重視されていく傾向になりますよね。」

 

Yさん「で、最終的には一番安全な『胃瘻で寝たきり』となるわけね…。」

 

森田「そうですね。でもその『安全』は、医療側にとっての『安全』なだけかもしれない。本人にとってはどうなのかな?ということです。実は、地域包括ケアにはもう1つ大事なイラストがありまして、『植木鉢モデル』と呼ばれるこれなんですが、、」

 

 

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厚労省HPより http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000126435.pdf

 

 

森田「植木鉢とか葉っぱに、医療とか介護とか、住まいとかいろいろ書いてありますが、一番の基礎のところは、実は『本人の選択・本人家族の心構え』と書いてあるんです。実は、地域包括ケアって、高齢者施設・住宅の整備とか医療と介護の連携とか、そういう上モノの部分も大事なんですが、それにもまして『そもそも本人の選択は何なのか、家族に心構えはできているのか』、そういうところが基礎にないと上手くいかないよ、というメッセージなんじゃないかな、と思うんです。」

 

Yさん「なんだか哲学的になってきたわね。」

 

森田「そうですね。元日経新聞編集委員の浅川澄一さんは、こんなイラストを描かれています。」

 

 

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浅川澄一さん作成

 

 

森田「一番上で、『本人の選択』が花開いています。つまり、本人の選択をそっと見守る『家族の心構え』という最終受け皿が一番の基礎にあって、その上に医療とか介護とか住まいとかが乗る。そして一番上で、本人の選択が生き生きと花を咲かせる。浅川さんのイラストはそんな意味なのかもしれません。」

 

Yさん「うーん、なるほどねー。なんとなくわかるけど、、でもさ、そりゃ本人の選択を重視するのは大事だし、理想よ。だからって、そうもいかないことだってあるのは先生だって分かるでしょう。だって、田舎の家で、一人暮らしさせて何かあったらどうするのよ!」

 

森田「Yさん、『何か』ってなんですか?」

 

Yさん「え?…例えば徘徊してどっかで事故にあったり。。」

 

森田「そうですよね。あと、火事や運転事故で他人を傷つけてしまうようなことは避けるべきですよね。ですので、2つめの漫画の例は、上手にIHを導入していますね。」

 

Yさん「そうね。あ、漫画の例では『徘徊』も、心配しながら見守ってるわね。」

 

森田「そう、実はここに、『本人の選択』をしっかり実現するための大事なポイントが隠れているんです。」

 

Yさん「え?どういうこと?」

 

 ……………。

 

【この漫画の作者、実は◯◯!が判明する『後編』へつづく。】

 

 

【後編】依存することで自立する?

    ↓ ↓ ↓ ↓ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地域包括ケアってこういうことだったんだ!」

 

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財政破綻・医療崩壊・さらに高齢化率日本一。
悪条件に取り囲まれてしまった夕張市。
果たして夕張市民の命はどうなってしまうのか?‥。


破綻後に医師として乗り込んだ筆者は、
それでも夕張市民が笑顔で生活していたことに驚く。
事実、財政破綻後のデータは夕張市民に
健康被害が出ていないことを示していた。

「病院がなくなっても市民は幸せに暮らせる! 」

もしそれが事実なら、一体なぜなのか?

本書は、その要因について、先生(元夕張市立診療所所長)と
生徒2人の講義形式でわかりやすく検証してゆく。
夕張・日本・世界の様々なデータを鳥の目で俯瞰し、
また夕張の患者さんの物語を虫の目で聴取するうちに3人は、
夕張市民が達成した奇蹟と、その秘密を知ることとなる・・。

少子高齢化や財政赤字で先行きが不透明な日本。
本書は、医学的・経済学的な見地から日本の
明るい未来への処方箋を提示する希望の書である。

 

森田洋之 著

 

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