Dr.森田の医療・介護お悩み相談室

1971年横浜生まれ。経済学部卒後、医師に。夕張市立診療所の元院長。財政破綻で病院がなくなっても夕張市民は元気だったよ!医療費も減ったよ!と論文やTEDxで発表したところ各界から総スカンを食らう。今は鹿児島県で診療・執筆・講演・研究・web発信などをしている。南日本ヘルスリサーチラボ代表、鹿児島県 参与(地方創生担当)

日本人の『孤独度』は世界トップクラス!? 〜きずな貯金のすすめ〜

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 先日、こんなニュースが流れてきました。

『孤独は喫煙と同じくらい健康リスクがあるとの研究結果』

https://www.lifehacker.jp/2017/07/170707_lonely_badhealth.html

 

『孤独』と『喫煙』が同レベルで健康に悪い?

 

ビックリですね。でもこの研究、実は2010年とちょっと古めのもので、すでに広く知られているものなのです。

 

 こちらの書籍、2014年発行の『友だちの数で寿命はきまる〜人との「つながり」が最高の健康法〜(石川善樹)』

 

 

 にもこの研究は詳しく掲載されています。

 

曰く「(この研究は)2010年に行われたアメリカのブリガム・ヤング大学のホルトランスタッドという研究者によるもの。20世紀と21世紀に行われた148の研究(総勢30万人)をメタアナリシス(複数の研究結果を統合)した結果、「タバコを吸わない」「お酒を飲みすぎない」「運動をする」「太り過ぎない」と行った項目よりも、『つながり』があることの方が寿命を長くする影響力が高い、という結論。」

 

とのこと。

 

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『友だちの数で寿命はきまる〜人との「つながり」が最高の健康法〜(石川善樹)』2014年、株式会社マガジンハウス発行、p.17より引用

 

 『社会的孤立』が健康に大きく影響する、逆に『つながり』があることが寿命を長くする。とても衝撃的な研究結果だと思います。

 

 では、我々日本人の『社会的孤立』・『つながり』の度合いはどうなのでしょう。

 

 様々な調査・研究がありますが、代表的なものが2つあります。

一つは、内閣府が日本・アメリカ・ドイツ・スウェーデンの「高齢者」を対象に比較調査を行ったもの。

 

 主な結果は以下。

 

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参照:ILC-Japan・国際長寿センター日本発行「われらニッポンの75歳」p.43, p46から引用。元データ:内閣府「平成27年度第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(調査対象は各国とも75~79歳)

 

 残念ながら、日本の高齢者は、『地域の活動に参加する人の割合がドイツ・スウェーデンの約半分』、『同居の家族以外に頼れる友人がドイツ・スウェーデン・アメリカの半分以下』、『親しい友人がいない割合が、同3国の倍以上』という結果です。

 

 もちろん、西欧諸国とは家族構成も違うでしょう。地域の活動に出なくても、親しい友人がいなくても、同居・別居の家族内でのつながりが強く、日本の高齢者はそこでの『つながり』を重視しているのかもしれません。

 ただ、これから高齢独居世帯、老老世帯などが増加することを考えると…、だからこそ今後はもっと地域の『つながり』が尊重されてもいいのかもしれません。

 

 とはいえ、これは『高齢者』を対象にした調査結果のお話。若者まで含めた調査結果はどうなのでしょうか。これが2つ目の調査結果。OECD(経済協力開発機構)によるものです。

 

 主な結果は以下。

 

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参照:「社会実情データ図録・社会的孤立の状況」http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/index.html元データ:Society at Glance : OECD Social Indicators-2005 Edition.

 

 こちらは年齢限定なしの結果。…やはり残念で意外な結果ですね。

 

『友人・同僚などとの付き合いが全くor めったにない』と答えた人が日本人が15%で20カ国中トップ!

 

 欧米各国といえば、『個』を重んじる『自由な社会』のイメージが強いですが、実は日本人よりもずっと『友人・同僚』などとの付き合いを重視しているようなのです。

 

 「社会的孤立」が、喫煙・肥満・過度な飲酒より健康に悪い!のならば、この結果は日本人が真摯に受け止めるべきものなのかもしれません。

 

 いや、健康に影響するとかしないとかそんな問題の前に、『孤独な人が多い』社会というものは、それ自体が健全なものではないのではないか?とも思えてきます。

 

 では、我々はどうすればいいのでしょう。

 

 実は、この問題を重要視し、改善に向けた実践をされている方々も日本には多くおられます。地域の『つながり』・『きずな』を重視し、それを『貯金』のように貯めていこう=地域に『きずな貯金』を貯めていこう、という取り組みはすでに、日本でも各所で行われているのです。今回はそんな、日本での取組みを少しご紹介します。

 

隣人祭り

 

 そもそもは、フランスのアタナーズ・ペリファンさんが、「地域で付き合いのない高齢者が孤独死していた」ことにショックを受け、「もう少し住民の間に触れ合いがあれば、悲劇は起こらなかったのではないか」と考えたことから始まりました。祭りと言ってもさして大掛かりなものでもなく、地域の人たちが食べ物や飲み物を持ち寄って集い、食事をしながら語り合う、ただそれだけです。年に一度のこの祭りの習慣、いまやヨーロッパを中心に29ヵ国、800万人が参加するそうです。

 

詳細は以下の本に詳しく載っています。

隣人祭り (ソトコト新書)  アタナーズ ペリファン (著), 南谷桂子 (著) 

 

 この流れは、日本でも始まっています。 すでに、『隣人祭り日本支部』http://www.rinjinmatsuri.jp/ が組織されています。また、渋谷区では隣人祭りからヒントを得て『渋谷おとなりサンデー』という企画が行われました。

 

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https://www.shibuya-otonari.jp/

 

 

 こちらのサイトを見る限り、当日は大盛況だったようですね。その他にも、「都会に田舎を作る」と地域の『きずな』をつないでおられる世田谷区の『せたカフェ』さん(http://seta-cafe.com/)などの例もあります。

 

 

 …考えてみれば、このブログでご紹介したこちらの2例も、地域の『きずな貯金』を貯める活動です。

 

 こちらと、

www.mnhrl-blog.com

 

      

 

親が認知症!?→ 疑い始めから要介護4まで…『自宅で独居』出来てます!その3つの秘訣とは。

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http://www.mnhrl-blog.com/entry/2017/6/30/arimurasan

 


 

 



 確かにこれらの活動は、ちょっと凄すぎ!常人離れしたもので、簡単には真似出来ない…と思います。確かにそうかもしれない。

 

 でも、僕らにも出来ることはたくさんあります。

 

もし、近所の人との関係が疎遠なのであれば、勇気を出して

「笑顔で挨拶」してみてはいかがでしょう?

 

もし、すでに近所の人と挨拶程度はできるけどそんなに付き合いはない、というなら

「旅行に行った時のお土産」を渡してみてはいかがでしょう?

 

お土産を持っていったら、そのうちお返しがもらえるかも。

そんなやり取りをしているうちに仲良くなってきたら、

その時勇気を出して

 

「ご近所で隣人祭りしてみませんか?」

 

と切り出してみたらどうでしょう?

近くの居酒屋で飲むだけでもいいのです。

 

 

 ま、そうは言っても、なかなか一朝一夕には行かないと思いますが(^_^;)。

 

 最期に、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ氏らが提唱する『きずな貯金』的な見解を紹介します。

 

「社会的なつながりをもつことで、暮らしの質が多くの面で向上する。最も楽しめる社会的諸活動の多くが社交をともなうものなのでより多くの社会的つながりがもっている人ほど、人生に高い満足度を見出している。」


参照:「社会実情データ図録・社会的孤立の状況」http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/index.html。元データ:ジョセフ・E.・スティグリッツ、ジャンポール・フィトゥシ、アマティア・セン「暮らしの質を測る―経済成長率を超える幸福度指標の提案 」金融財政事情研究会、原著2010年、p.83~84

 

 地域の『きずな貯金』が溜まっていくことで、

ご近所の高齢者の、そしてあなたの健康が保たれるなら、

その労は、決して高いコストではないような気がします。

 

 さあ、今日から『一歩』踏み出してみませんか?

 

 

  

  

 

秘密は… 『きずな貯金』

 

破綻からの奇蹟表紙画像

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財政破綻・医療崩壊・さらに高齢化率日本一。
悪条件に取り囲まれてしまった夕張市。
果たして夕張市民の命はどうなってしまうのか?‥。


破綻後に医師として乗り込んだ筆者は、
それでも夕張市民が笑顔で生活していたことに驚く。
事実、財政破綻後のデータは夕張市民に
健康被害が出ていないことを示していた。

「病院がなくなっても市民は幸せに暮らせる! 」

もしそれが事実なら、一体なぜなのか?

本書は、その要因について、先生(元夕張市立診療所所長)と
生徒2人の講義形式でわかりやすく検証してゆく。
夕張・日本・世界の様々なデータを鳥の目で俯瞰し、
また夕張の患者さんの物語を虫の目で聴取するうちに3人は、
夕張市民が達成した奇蹟と、その秘密を知ることとなる・・。

少子高齢化や財政赤字で先行きが不透明な日本。
本書は、医学的・経済学的な見地から日本の
明るい未来への処方箋を提示する希望の書である。

 

森田洋之 著

 

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