Dr.森田の医療・介護お悩み相談室

1971年横浜生まれ。経済学部卒後、医師に。夕張市立診療所の元院長。財政破綻で病院がなくなっても夕張市民は元気だったよ!医療費も減ったよ!と論文やTEDxで発表したところ各界から総スカンを食らう。今は鹿児島県で診療・執筆・講演・研究・web発信などをしている。南日本ヘルスリサーチラボ代表、鹿児島県 参与(地方創生担当)

ノロウイルスの徹底解説。 元気な人でも陽性?、検査・薬から自作経口補水液の作り方まで。

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↓ ざっくり言うと ↓


◯ ノロウイルスは実は身近に居る

◯ 検査はあてにしすぎない

◯ 吐いたらハイター、手洗いも(消毒液作り方図解)

◯ 特効薬はないけど治る。

  →経口補水液を上から飲んで下から出す(経口補水液:作り方図解) 

 

 

お悩み相談

 テレビでノロウイルス感染を懸念しての『餅つき大会中止』の話題が出ていました。去年子供がノロウイルスにかかって大変だったので、子供を「餅つき大会」に参加させるかどうか悩んでいます(子どもたちは楽しみにしているのですが)。どうしたらいいでしょうか。

 

登場人物

 

 

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森田先生:とりあえず何でも診る総合診療(プライマリ・ケア)の医師。40代。

 

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Yさん:2人の子を持つ30代専業主婦。元病院看護師。

 

 

 

 

 

 

森田「さあ、今日はノロウイルスについてのご相談ですね。」

 

Yさん「そうそう!こないだ『特ダネ』でもやってたわよ。『餅つき中止!』って。おぐらさんが『それでも俺は食べる!』って言ってた(笑)。」

 

森田「(笑)いろいろ情報があるので皆さん迷いますよね。さあ、それではそのノロウイルスについて、いまどう考えればいいのか、勉強していきましょうか。」

 

Yさん「うんうん、興味ある。」

 

森田「まず考えかたの前提として一つ言っておきたいことがあります。実は、みなさんが思っているほど、ノロウイルスって特別なものでなく…実はそのへんに結構居るらしいんですよ。」

 

 

実は身近なノロウイルス。

 

 

Yさん「え!そうなの?」

 

森田「一般的なイメージだと、ウイルスがいる場所、いない場所できっぱり分けられるような、こんなイラストのイメージじゃないかと思うんです。」

 

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Yさん「ま、ふつうそう思ってるわよね。そうじゃないの?」

 

森田「実は、イギリスで健康な人の便をPCRという方法で精密に調べたら、12%の割合でノロウイルスが検出されたらしいんです…。特に、5歳以下の子供と冬期に多かったそうです。(Phillips G. et al., Prevalence and characteristics of asymptomatic norovirus infection in the community in England. Epidemiol Infect. 2010 Oct;138(10):1454-8. Epub 2010 Mar 3.)

 

Yさん「うわ!12%って、8人に1人でしょ!結構な割合よね〜!。それも元気な人に……でも、それってどういうこと?」

 

森田「そうですね。実はノロウイルスがいる世界vsいない世界、とパッキリ分けられるのではなく、微量かもしれないけど、ノロウイルスって常に身近に居る、って思っといたほうがいい、ってことなんでしょうかね。」

 

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Yさん「え〜〜!なんかちょっと意外!」

 

森田「ですよね〜。でも、こういうのって案外他にもあることなんですよ。だって、食中毒の原因になる黄色ブドウ球菌だって、実は人間が持ってる常在菌でそこら中にあるものですし、インフルエンザウイルスだって、うつっても無症状の人が7割という報告もあります。……結局、菌やウイルスは、実はその辺の身近にいて頻繁に体内に入ってるけど、大抵の場合は免疫力で対処出来る範囲内なので、『大した症状も出ずにおしまい』って言う感じなんでしょうね。」

 

Yさん「ふ〜〜ん、そうなんだ〜。ちょっと意外。……でも、ひどい症状になることもあるじゃない。」

 

森田「そうそう、ゲーゲー吐いてる人の吐物や便なんかはノロウイルス量も大量にいるでしょうから、それに触れたりすると体内に入ってくるウイルス量も桁違いに多い、そういう時は嘔吐や下痢を発症する可能性も高いですよね。」

 

Yさん「そうそう、だから怖いのよ。」

 

森田「ですよね。そう言う時はハイターを使いましょう。」

 

 

吐いたらハイター、手洗いも

 

 

Yさん「吐いたらハイターって…ダジャレですか(笑)」

 

森田「いや、ツイッターで流行ってたので・・。でも覚えやすいからいいですよね。こんな感じ。」

 

 

 

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Yさん「確かに簡単ね。これをどうすればいいの?」

 

森田「ウイルスがいそうなところにかけてやればいいんです。あ、その前にマスクをしましょうね。ウイルスは吐物や便に居るだけでなく、飛沫で飛んできますから。で、吐物とか便とかはビニール袋でくるんできつく結んで捨てる。ウイルスはビニール袋からは出られません。で、その後、処理しきれないところにさっきの薄めたハイターかけてやれば、ウイルスは死にます。」

 

Yさん「その後に手を洗う?」

 

森田「そうそう、手洗いも大事。ノロウイルスはアルコール消毒では死なない。だから、あのよくシュッシュッって手にかけるやつ、あれでは死なない。ちなみに、インフルエンザウイルスはアルコール消毒で死にますけどね。なので、手に着いたノロウイルスは、水道で流すのが一番。石鹸つけて丁寧に流す。あ、水で流すという言う意味では、吐物や便の処理も、水で流せるところなら水で流すのがいいですよ。なかなかそうもいかないでしょうけど。」

 

Yさん「絨毯とか畳だと水では流せないもんね。」

 

森田「ですよね。そういう場合は、なかなか完璧には処理できないでしょうからハイターを使う。でも、さっき言ったように、そもそもノロウイルスはその辺にいるものなので、完璧に処理しなきゃ!って躍起になるより、出来るだけ消毒してウイルス量を減らそう、あとはしょうがない、くらいの気持ちの方がいいと思います。完璧を目指すとキリがない…特に高齢者施設なんかでは外出もできない、外部者入室禁止、果ては犯人探しが始まったりとか、だんだん生活が窮屈になってしまいます。」 

 

Yさん「あ、なんか心当たりあるわ・・。じゃあさ、例えば子供が吐いて下痢してる。ノロウイルスかもしれない。って時、病院行ったら何してくれるの?」

 

 

迅速検査の感度は4〜6割

 

 

 

森田「そうですね。インフルエンザの検査と同じで、今はノロウイルスも短時間で検査ができます。だから検査を希望される施設や患者さんも結構多いんですが、でも実はこの検査、まだ精度が高くなくて、感染者のうち4〜6割しか陽性にならないらしいんです。(Bruin E. et.al., Diagnosis of Norovirus outbreaks by commercial ELISA or RT-PCR, J Virol Methods. 2006;137(2):259. / González GG. et.al., Evaluation of a commercial enzyme immunoassay for the detection of norovirus antigen in fecal samples from children with sporadic acute gastroenteritis, J Virol Methods. 2006;136(1-2):289.)

 

Yさん「4〜6割か…結構あてにならないのね。」

 

森田「そうなんですよ。本当はノロに感染してるのに検査で陰性しか出ない…それならかえって検査しなかったほうが良かった…なんてこともよくあります。」

 

Yさん「じゃ、どうすればいいの?」 

 

森田「そうですよね。なので、あまり検査にこだわらず、その時のノロウイルスの流行状況とか、嘔吐や下痢などの典型症状の有無とかで判断して行くほうがいいでしょうね。…でも、検査がどうあれ、結局治ればいいわけで、そういう意味では治療はシンプルです。」

 

 

治療の基本は水分・塩分補給

 

 

Yさん「どういうこと?」

 

森田「残念ながらノロウイルスに特効薬はありません。ノロウイルスでもコレラでも食中毒でも、基本的に嘔吐・下痢症状の治療は、『水分・塩分補給』です。つまり、嘔吐や下痢で体内から失われたものを補ってあげる。これだけなんですね。」

 

Yさん「それだけなんだ!」

 

森田「そうそう、でもただの塩水じゃ不味くてあまり量を飲めないので、砂糖も入れて、栄養補給も兼ねて飲みやすくしているのが『経口補水液』というやつ。OS-1という名前で薬局でも売られていますが、このイラストみたいにすれば簡単に自宅で作れます。これもペットボトルとその蓋だけね。」

 

 

 

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森田「あと、嘔吐・下痢は体内からカリウムも奪うので、レモンとかバナナとか果物の果汁をいれてもいいですね。ま、結果として主として水分と塩分が入ればいいので、美味しくいっぱい飲めれば何を入れてもいいと思いますよ。」

 

Yさん「へ〜、簡単!理屈としては単純なのね。」

 

森田「そうです。単純ですがこれは非常に大事なことで、この治療法が分かってなかった昔はコレラなどで大量に死者が出ていました。昔は脱水症状だけで命を落としていたんですね。今は対処法がわかっているので、世界中でこの治療法が行われて多くの命が救われています。」

 

Yさん「そうなのね〜。なるほど、でも、吐き気が激しい時はなかなか飲めないわよね。」

 

 森田「そういう時は、吐き気がない時を狙って飲みましょう。大抵の場合、ずっと吐き気がしているわけではないですから。とはいえ、それでも水分が飲めない、脱水症状が激しい、口の中も渇いてきた。そんな時は点滴で強制的に血管から水分補給、という手もあります。」

 

 

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Yさん「点滴は効くのよね〜。」 

 

 森田「そう、効きます。だから、『ひどくなる前に早めに病院に来ました』という人も居るんですが……でも、点滴してるのは大抵、食塩水くらいなもので、特別な薬は入ってないんです。そう考えると、飲めるうちは出来るだけ自力で飲んだほうがいいんですよね。」

 

Yさん「あ、薬入ってないんだ!点滴も食塩水なのね…。」

 

森田「そう。もちろん、高齢で病気療養中などの方々は早めの受診も大事ですけどね。あと、小さいお子さんの場合は、一度にたくさん飲めないかもなので、ティースプーンでこまめに何回も何回もあげるといいですね。」 

 

Yさん「なるほどね〜。」

 

森田「あと、下から出すことも大事。たまに『下痢で出ちゃうから水分を取りたくない』という方がいますが、これは間違い。」

 

 

上から飲んで下から出す(からだ丸洗い)

 

 

森田「ノロウイルスなどは、実は『薬で治す』と言うよりも、『体内から排出して治す』という表現のほうが近いです。下痢というのはある意味、『悪いものは一刻も早く出してしまえ』という体の防御反応とも言えます。ですので、下痢で出して、そのかわり水分・塩分は補給する。上から飲んで下から出す。体の中を丸洗いするくらいのイメージで思っていただけるといいかもしれません。」

 

Yさん「へ〜、丸洗いか〜、そう思うと下痢のときもちょっと気が楽かもね。」

 

森田「そうですね。以上をまとめるとこんな感じ。」

 

 

ノロウイルスは実は普段から身近に居る
(だから完璧に排除しようとこだわりすぎない)
検査はあてにしすぎない
吐いたらハイター、手洗いも
特効薬はないけど、元気な人なら治る。
経口補水液を上から飲んで下から出す(からだ丸洗い) 

 

 

Yさん「うん、なんだか分かってきたような気がするわ〜。…で、結局、最初のご質問の『子供の餅つき大会』は行ってもいいのかな?」

 

森田「ま、それも考え方次第ですね。『毎年大丈夫なんだから今年も食べさせる!ノロになったらなったでいい(元気な人ならかならず治る)』という考え方もありだし、『やっぱり心配だから、加熱したものだけ食べさせます(茹でたり焼いたりすればウイルスは死ぬ)』というのもあり。…さっき言ったように、ウイルスも菌も完全には排除は難しいから、上手に付き合っていこう、みたいな感じで思っていただいて、あとは皆さんで考えてくれればいいんじゃないかな〜?」

 

Yさん「また、お医者さんなのに読者に丸投げしたわね(笑)」

 

森田「すみません(笑)……ということで、今回はおしまい〜〜(笑)」

 

 

 

 未来に残すべき
『価値あるアイデア』を。

 

 

 

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爺ちゃん婆ちゃんが輝いてる!
職員がほとんど辞めない!
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最期は家族のようにお看取りまで…

…辛い・暗いの介護のイメージをくつがえす
「あおいけあ」流介護の世界。
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される講義の受講生はおなじみのYさんとN君。

マンガ・コラム・スタッフへのインタビューなど
盛りだくさんの内容でお送りする、
まさにこれが目からウロコの次世代介護スタイル。

 

超高齢化社会も、これがあれば怖くない!

 

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★★★★★★★★★

日本医学ジャーナリスト協会
優秀賞受賞作品(2016)
★★★★★★★★★

財政破綻により病院がなくなってしまった夕張市、
しかも高齢化率は市として日本一。
果たして夕張市民の命はどうなってしまうのか?‥。
しかし財政破綻後のデータは、夕張市民に健康被害が 出ていないことを示していた。

事実、夕張市民は笑顔で生活していた。
「病院がなくなっても市民は幸せに暮らせる! 」
それが事実なら、それはなぜなのか?

本書は、その要因について、先生(元夕張市立診療所所長)と
生徒2人の講義形式でわかりやすく検証してゆく。

夕張・日本・世界の様々なデータを鳥の目で俯瞰し、
また夕張の患者さんの物語を虫の目で聴取するうちに3人は、
夕張市民が達成した奇蹟と、その秘密を知ることとなる・・。

少子高齢化や財政赤字で先行きが不透明な日本。
本書は、医学的・経済学的な見地から
医療・介護・地域社会の問題を鮮やかに描き出し、
日本の明るい未来への処方箋を提示する希望の書である。

森田洋之 著

 

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