Dr.森田の医療・介護お悩み相談室

1971年横浜生まれ。経済学部卒後、医師に。夕張市立診療所の元院長。財政破綻で病院がなくなっても夕張市民は元気だったよ!医療費も減ったよ!と論文やTEDxで発表したところ各界から総スカンを食らう。今は鹿児島県でフリーランス医師。懲りずに執筆・講演・研究・web発信など儲からないことばかりやっている。

インフルワクチン…結局打った方がいいの?打たない方がいいの?…はっきりしてよ!!

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お悩み相談

我が家には小学校と幼稚園の2人のこどもがいます。インフルエンザの季節が近いのでワクチンを受けようと思うのですが、インターネットを見ると「ワクチンは効果がない、危険だから打つな」という記事が沢山あり、迷ってしまいます。結局どうしたらいいのでしょうか?お医者さんはどうしてるんでしょうか?

登場人物

 

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森田先生:地域医療・高齢者医療を中心に活動している医師。40代。

 

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Yさん:2人の子を持つ30代専業主婦。元病院看護師。

 

 

 

 

 

森田「今回のお悩み相談は旬の話題、インフルエンザワクチンについてですね。」

 

Yさん「あ〜、この手の話。よくあるわね。私も看護師だからよく聞かれるわ〜。・・・で、先生結局どうなの?」

 

森田「いやいや、なかなか一言では表現できないというか・・・」

 

Yさん「そこを一言でズバッと言ってよ。結局どうなの?って言うところ、みんなそこが知りたいんだから!」

 

森田「え〜!?こういうのは順序立ててですね・・・。」

 

Yさん「ダメダメ。結論は最初に言わないと!最後まで読む人なんてそんなにいないんだから。だって、どうせ先生のことだから、いつも通り『決めゼリフ』みたいなの決めてあるんでしょ?」

 

森田「う!バレてる!・・ま、じゃ、仕方ない。最初にお出ししますかね。…ふう。…で、結局の所どうなの?というところでの僕の結論はこんな感じです…」

 

インフルエンザワクチンは100%じゃないけどそこそこ効くから打ったほうがいいかもよ。

 

 

森田『インフルエンザワクチンは100%じゃないけどそこそこ効くか

ら打ったほうがいいかもよ。』どうですか?」

 

Yさん「いやいや先生、なによこれ。全然ズバッと言ってないし!『そこそこ』とか『かもよ』とか…そんな曖昧な…。」

 

森田「ま、その曖昧さにも意味があるわけでして・・じゃ、早速その理由を見ていきましょう。」

 

ネット情報の信憑性

 

森田「そもそも、ご質問の発端はインターネットで「インフルエンザワクチンは打つな!」と情報が回っていること、ということでしたよね。」

 

Yさん「そうそう、今はネットが全部疑問に答えてくれますからね〜。さっそく、、え〜〜〜(スマホで検索)あったあった。あ〜〜、ホントだ。『インフルエンザワクチン』でGoogle検索すると、一番上が『Naverまとめ〜インフルエンザワクチンは打たないで!【常識はウソだらけ】』ですわ。950万回閲覧だから、国民の10人に一人くらいがここ見てるわけね。」

 

森田「ですね〜(スマホ覗き込む)、3番目も『インフルエンザワクチンは効果がない?予防接種が無意味と言われる理由』ですもんね」

 

Yさん「検索結果がこれならみんな迷うわよね〜。」

 

森田「そうでしょうね。そう言えば、去年は、毎日新聞でも『インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし 慶応大など、4727人調査』なんて記事もありましたし。。。」

 

Yさん「こんなに書かれてるなら、やっぱワクチンは効果ないんじゃないの?」

 

森田「いやいや、そうでもないと思います。まず、検索トップだった『Naverまとめ』…よく見ると、そのデータや言説の出所がほぼ全て『母里啓子』さんなんですね。」

 

Naverまとめ〜インフルエンザワクチンは打たないで!【常識はウソだらけ】

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森田「で、母里さんの説や、Naverのこの記事の多くは『前橋レポート』というものに由来しているんですが、このレポート、今では一般的に行われている、皆さんご存知のインフルエンザ検査がまだ殆どできなかった1980年代のもの。発熱などで学校を休んだ人をインフルエンザにかかった人数にカウントしていたりでデータ自体の信頼性があまり高くない。学術的な部分では信頼性があまり高くないと言われています。」

 

Yさん「へ〜、そうなんだ。でもそんなことみんな知らないから、検索のトップに来てたら信じちゃうわよね〜。」

 

森田「そうですね。あと、去年の毎日新聞の記事にあった慶応大学の調査。」

 

インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし 慶応大など、4727人調査(毎日新聞)

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森田「これ、タイトルに『乳児・中学生に予防効果なし』と書かれてありますよね。ということは、実はそれ以外の年代にはグラフのような効果があったということでもありますよね。しかも、実は乳児・中学生にも効果がなかったわけではないんです。元の慶応大学の論文には『乳児・中学生については、データが少なくて解析できなかった、もしくは効果は他の年齢層より低めだけど、乳児・中学生でもそれなりに効果はあった』と書いてあるんですね。」

出展:http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0136539

 

Yさん「あの〜、データとかの話しだすと先生の話だんだん難しくなってくるからさ〜、読者はね、そこまで正確性は求めてないのよ。…つまり先生が言いたいのは、『ワクチンが効かない』というのはデマで、ワクチンは効く!っていことでいいのね。」

 

森田「いや、それもチョット待って。そういう事言うと、ワクチンは100%効く!と勘違いされるかもしれないので…。医療には100%絶対ということは殆ど無いですからね。」

 

Yさん「じゃ、何%なのよ。」

 

森田「う・・・それもいろいろな研究によって数字はバラバラです。その年によっても違うし、地域によっても、年齢層によっても違うでしょう。さっきの慶応大学の研究でも、年齢層やインフルエンザの型によって、一番高い値は80%以上、低い値は30%くらいですし・・・」

 

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Yさん「先生、大体のところでいいからズバッと言わないと。一般の読者には伝わらないわよ。」

 

森田「う〜〜ん……では、批判を恐れず勇気を出して言いますと、まあ、50%くらいの確率でも、効いてくれたら嬉しいな〜、と・・。」

 

Yさん「なるほど〜、半分効けば…ってところか〜。ビミョ〜・・・」

 

森田「そうですよね。ワクチンの中には、BCG(結核のワクチン)とか「はしか」のワクチンとか、もっと格段に効くワクチンもあります。そういう意味ではインフルエンザワクチンが効く確率は高い方ではないほうかも。」

 

Yさん「え〜〜!なら打たなくていいじゃない。」

 

森田「いやいや、確かにそうなんですけどね、だから僕もあえて「打つべき!」と言わずに「打ったほうがいいかもよ」とちょっとトーンダウンしてるんですけど…。でも、それも考え方次第ですよ。だって、インフルエンザにかかったら高熱がでたりして、やっぱり何日か大変な思いするじゃないですか。それを注射一本で50%でも防いでくれるなら、打っておいたほうがいい、と考えてもいい“かも”ですよね。」

 

Yさん「う〜ん、ま、それもそう“かも”〜。」

 

森田「そうそう。で、こういうときは、それをすることで得られる利益と不利益、つまり、メリットとデメリットを分けて考えると頭がスッキリします。」

 

 

インフルエンザワクチン の メリット・デメリット

 

 

Yさん「なるほどね。じゃ、インフルエンザワクチンのメリットは、今教えてもらった『50%の確率でインフルエンザを予防できる』ってことでいいわよね。」

 

森田「そう。あと、重症化を防げるというのもあります。特に、妊婦さんやご高齢の方々、肺の病気のある方々などは、インフルエンザが重症化すると大変です。こういう方々は、重症化予防という意味でのメリットが大きくありますので、予防接種をしておく意義はあると思います。また、自分の回りの愛する人達を守るため、自分が感染しない、自分からうつさない、という考え方も大切ですよね。」

 

Yさん「じゃ、デメリットは?」

 

森田「それがですね。デメリットには大したものがないんですよ。あるとすれば、注射したところが赤く腫れて何日かチョット痛い、とか、お金がかかるとか、そんなところでしょうか。インフルエンザワクチンの重い副作用って、ほぼないと言っていいくらいです。妊婦さんにも安全と言われていますし。」

 

Yさん「でも、ネットにはアナフィラキシーショックとかアレルギー反応とか色々書いてあるわよね。

 

森田「まあ、ワクチンの説明書にも一応書いてあるので、ネットにも書いてありますけどね、でも、確率的に言ったら『かな〜〜り低い確率』です。もちろん卵アレルギーの人とか、以前インフルエンザワクチンでアレルギー反応があった人は注意したほうが良いですけど。」

 

Yさん「確かにそうかもね。私もインフルエンザワクチンの重い副作用って聞いたことないわ。赤く腫れるのはあるけどさ。っていうか今、左腕腫れてる(笑)」

 

森田「あ、そうなんですか。ちなみに私も先日打ったので、左腕が赤く腫れています(笑)。」

 

Yさん「そうそう。そういえば質問の最後に、『お医者さんはどうしてるんでしょうか?』ってあるわよね。今先生の左腕が腫れてるってことは、まず森田先生はワクチンはする。ということでいいわね。他の先生はどうなの?」

 

森田「そうですね〜。私の知っている先生達の範囲で言えばですけど、先程のネット記事のような情報を信じてインフルエンザワクチンを敬遠するような医師に出会ったことはありませんね。私の周りの先生たちはまず全員インフルエンザワクチンを打っていますよ。」

 

Yさん「そうね。私の知る範囲でも、そういう医師・看護師はいなかったわね〜。」

 

森田「多分、どの医療現場でも多分そんなところだと思います。」

 

Yさん「あ〜、そうよね。そういうことだわ。質問された方も、データがどうとかエビデンスがどうとかよりも、ネットで流れてる情報と実際の医療現場の温度差、みたいなものが知りたい、って言う意味が大きいんじゃないかしら?そういう意味では今回の記事、もう最後の先生の一言『私の周りの先生たちはまず全員インフルエンザワクチンを打っています』だけで良かったのかもね〜。」

 

森田「え〜!?そうなの?せっかくだからいろいろ勉強してほしいんですけど…。」

 

Yさん「そう言う勉強とかは、先生たちがしてくれて、私たちに一言でズバっと教えてくれればいいのよ!」

 

森田「え〜、と、だから医学ってなかなか一言では言い表せないから難しいんであって・・。ってなんか繰り返しになってきた…。もう、じゃ、今回はこの辺で終わりにしましょうか(笑)。」

 

Yさん「そうね。で、次回はあるの?」

 

森田「せっかくだから次回は、『インフルエンザになったら(検査編)』でもやりましょう。」

 

Yさん「あ、それいいわね〜!そろそろインフルエンザも流行りだして、患者さんが増える時期だもんね。」

 

森田「そうですね。あと、もう一つ。インフルエンザワクチンは、注射してから2週間でようやく効いて、その後5ヶ月くらい効いてるらしいんですね。インフルエンザは毎年寒くなる時期、12月頃から流行りだしますので、どうせ打つなら、できれば11月中に打っておきたいところですね。」

 

Yさん「なるほど、そしたら寒い12月から暖かくなる4月まで効くもんね〜。」

 

森田「そうですね。ということで、また次回!(^_^)/」

 

 次回へつづく

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超高齢化社会も、これがあれば怖くない!

 

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日本医学ジャーナリスト協会
優秀賞受賞作品(2016)
★★★★★★★★★

財政破綻により病院がなくなってしまった夕張市、
しかも高齢化率は市として日本一。
果たして夕張市民の命はどうなってしまうのか?‥。
しかし財政破綻後のデータは、夕張市民に健康被害が 出ていないことを示していた。

事実、夕張市民は笑顔で生活していた。
「病院がなくなっても市民は幸せに暮らせる! 」
それが事実なら、それはなぜなのか?

本書は、その要因について、先生(元夕張市立診療所所長)と
生徒2人の講義形式でわかりやすく検証してゆく。

夕張・日本・世界の様々なデータを鳥の目で俯瞰し、
また夕張の患者さんの物語を虫の目で聴取するうちに3人は、
夕張市民が達成した奇蹟と、その秘密を知ることとなる・・。

少子高齢化や財政赤字で先行きが不透明な日本。
本書は、医学的・経済学的な見地から
医療・介護・地域社会の問題を鮮やかに描き出し、
日本の明るい未来への処方箋を提示する希望の書である。

 

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