Dr.森田の医療・介護お悩み相談室

1971年横浜生まれ。経済学部卒後、医師に。夕張市立診療所の元院長。財政破綻で病院がなくなっても夕張市民は元気だったよ!医療費も減ったよ!と論文やTEDxで発表したところ各界から総スカンを食らう。今は鹿児島県でフリーランス医師。懲りずに執筆・講演・研究・web発信など儲からないことばかりやっている。

発達障害の子供をもつ医師として。

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 (筆者と子どもたち。2009年、北海道の離島にて) 

 

 

 

先日、こんな記事を目にしました。

 

急拡大する「発達障害ビジネス」その功と罪 〜はたして、それは適切ですか?〜
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52401

 

 

 『発達障害ビジネス』が急増しているという記事です。

たしかに、「発達障害」という言葉を聞く機会は増えています。Google検索の頻度もここ十数年で10倍程度に増えているようです。

 

 

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https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=all&q=発達障害

 



 我が家にも発達障害の子がいまして、地元の小学校に通っています。そういえば、この小学校でも、5年前は支援学級は1教室だったのに、今はなんと4教室!に増えています。…子供全体の数は減少傾向なのに。

 

 では、『発達障害』という障害が、ここ最近すごい勢いで増えているのでしょうか?いや、そうではないような気がします。むしろ、『昔から発達障害の子は居て、その数(率)は大して変わっていないが、一方で "発達障害" という障害についての一般社会への周知は進んだ、理解は深まった。(=診断の機会が増えた)』という方が近いような気がします。

 

 その流れの中で、記事のような『発達障害ビジネス』が急増して来ているのだということですね。

 

 今回は、この件について、親の視点、医師の視点、経済の視点、いろいろな立場からこのことを考えてみます。

 

 


親として。


 うちの子は今、普通小学校で、特殊学級と普通学級と半々の学校生活です。まあ、欠点を挙げればキリがない。聴覚が敏感すぎるのか、耳を塞いで教室から逃げ出すこともあります。友達との距離感が近すぎるためか、馬鹿にされるからなのか、クラスメイトとトラブルになることが多く、怪我をさせてしまった時は、親子3人で菓子折りを持って謝りに行きます(泣)。

 ……でもほんの一部かもしれませんが、長所もあります。例えばレゴブロックだったり、恐竜の図鑑だったり、好きな物に集中するときの集中力はすごいです(それも障害の一部なのかもですが(^^))。

 

 そういうと、何か「発達障害」に特別な、すごい教育法でもあるのか、と思われるかもしれませんが、うちに限って言えばそういうものはありません。

 

 ひとつだけ挙げるなら…無理に欠点を克服しようともせず、無理に長所を伸ばそうともせず、「自分は自分、ありのままの自分でいいんだ。それだけでお父さんにもお母さんにも、みんなにも愛されるんだ」。というメッセージを全身で伝えようと思っています。

  そして、出来た時は一緒に喜んで、『君の力が伸びるとお父さんも嬉しいよ』ということを伝える。ただそれだけです。それだけなのですが、今は、好きな分野だと中学レベルの本も読んでいたりします(算数などは悲惨です。それはそれでそのうちなんとかなるかもしれないし、なんとかならなければそれでもいいと思っています(笑))。

 

 流行りの言葉で言うと『自己肯定感』を育てる、というのに似ているかもしれません。ま、そういう意味では、この姿勢は3兄弟変わらず一緒だし、つまり発達障害がどうこうではなく、我が家の普遍的な教育法なのだと思います。

 

 あと、近隣の方々、地域住民に決して隠さず、どんどん発信しています。『こういう子が地域に住んでいる』と知ってもらって、地域のみんなで理解して支えてくれたほうが、彼が生きやすい(そして親も楽(笑))かな、と思っています。



 

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近隣の方々と食事会。特に「障害」について説明するわけではありませんが、彼もこの輪の中に自然に溶け込んでいます。

 

 


医師として。


 僕は彼を治そうと思っていません。発達相談・療育などの支援は早いうちから受けていましたが、投薬などの『治療』は全くしていません。

 発達障害についてはまだまだわからないことが多いのが現状ですが、今のところ『根本的な治療法』はありません。というか、治療の対象、と思うことすら僕は間違っていると思っています。多分、これは生来のもので、彼の個性です。たとえは悪いかもしれませんが、「ダウン症を治す」「陰気な性格を治す」という医師がいないのと同じ感じでしょうか。

 

 いま彼に『治療』は必要だとは思いませんが*1、その代わり『周囲の理解(少し変わっていても別に気にしないよ、という理解)』と、それを補う『適切な支援』は必要だと思います。

 

 そして、それさえあれば彼は多分今後の人生を、普通に一般社会で生きていけるし、十分社会に貢献できる存在になれると思います。

 

 

 

経済学の視点から。


 病気や障害は、ビジネスに馴染みません。これは「市場の失敗」です。「発達障害ビジネス」に関して言えば、問題は以下の2点だと思います。

 

◯情報の非対称性

 

 そもそも医療の世界では、医師などの「供給」サイドと、患者・家族などの「需要」サイドで、その医学的知識に大きな差があると言われています。つまり「医療」という商品(あえて商品と言います)については、供給側と需要側でその商品の価値・有用性の判断能力に大きな差があるということです。特に発達障害の世界は、本当にまだまだわからないことだらけで、医療者でさえ本当のところがわかっていない。そう考えると患者・家族の「需要」サイドにとって、商品の有用性・価値判断は、いっそう困難であることが予想されます。つまり「いい商品なのか、そうでもない商品なのか」、が判定困難な状態では「市場原理」は成り立ちにくい、ということです。

 

 

◯『再現性の欠如』

 

 「発達障害」を治療します・支援します、と言う時、通常それは長期にわたるトライアルとなります。そしてそれは、患者側にとって1回きりのものです。その効果も、それが通常の発達段階なのか、治療・支援のおかげなのか分かりにくい。
 つまり、「発達障害治療」という商品は、人生で1回しか購入の機会がない商品、であり、しかも非常に個別性が強く隣人との比較が困難な商品、と言うことができます。結果、こういう商品については、どうしても売り手側の理論が強く反映されてしまいます。これでは市場原理は成り立ちにくい。

 

 市場原理がなりたたない市場(売り手に優位性が高い市場)で、医療を自由に売っていいということになれば、売上は右肩上がりにどんどん増える…ことになりかねません。冒頭の『発達障害ビジネス急増』の記事の裏には、そうした経済学的な背景があるのかもしれません。

 

 以上のことは、がん治療(代替療法など)にも当てはまるし、もっといえば、医療業界全体にも当てはまります。


 もう一度言います、医療はビジネスには馴染みません。

医療はもっと謙虚に、
 
『過剰もなく不足もなく、真に患者さんの人生に貢献できるもの』
 
を目指すべきだし、
 
もっと明確に『公』を目指すべきだと思います。
 

 

 

まとめ 

 

 『発達障害』については、まだ医学的にも良くわかっていません。根本的治療もありません。そして、その医療はビジネスに馴染みません。

 彼らに必要なのは、『周囲の理解』と『適切な支援』だと思います。

 

 『障害があっても、病気があっても、高齢になっても、地域のみんなで違いを認めあって笑って過ごすことが出来る豊かな社会』

 

 そんな社会を考えると僕は、「出生率日本一の徳之島」や、「総合病院がなくなったのに健康被害もなく高齢者医療費を減らした夕張市」のことに思いを馳せてしまいます。そう、離島や僻地では、自然な形で『周囲の理解』と『適切な支援』が存在しているのです。実は、そんな社会は結果として、『低コスト』で『子育てに優しい(出生率も上がる?)』なのかもしれません。

 

 それこそが、今後の人口減少・少子高齢化を迎える日本が目指すべきところなのではないか…。僕は今、そんなことを考えています。

 

  

 

 
 
追伸:

市場の失敗についてはここに書きました。
 ↓ ↓

 

*1:発達障害に対してすべての治療が必要ないといは思っていません。症状を和らげる「対症療法」的な投薬は「適切な支援」にも含まれるものだと思います。

日本人の『孤独度』は世界トップクラス!? 〜きずな貯金のすすめ〜

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 先日、こんなニュースが流れてきました。

『孤独は喫煙と同じくらい健康リスクがあるとの研究結果』

https://www.lifehacker.jp/2017/07/170707_lonely_badhealth.html

 

『孤独』と『喫煙』が同レベルで健康に悪い?

 

ビックリですね。でもこの研究、実は2010年とちょっと古めのもので、すでに広く知られているものなのです。

 

 こちらの書籍、2014年発行の『友だちの数で寿命はきまる〜人との「つながり」が最高の健康法〜(石川善樹)』

 

 

 にもこの研究は詳しく掲載されています。

 

曰く「(この研究は)2010年に行われたアメリカのブリガム・ヤング大学のホルトランスタッドという研究者によるもの。20世紀と21世紀に行われた148の研究(総勢30万人)をメタアナリシス(複数の研究結果を統合)した結果、「タバコを吸わない」「お酒を飲みすぎない」「運動をする」「太り過ぎない」と行った項目よりも、『つながり』があることの方が寿命を長くする影響力が高い、という結論。」

 

とのこと。

 

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『友だちの数で寿命はきまる〜人との「つながり」が最高の健康法〜(石川善樹)』2014年、株式会社マガジンハウス発行、p.17より引用

 

 『社会的孤立』が健康に大きく影響する、逆に『つながり』があることが寿命を長くする。とても衝撃的な研究結果だと思います。

 

 では、我々日本人の『社会的孤立』・『つながり』の度合いはどうなのでしょう。

 

 様々な調査・研究がありますが、代表的なものが2つあります。

一つは、内閣府が日本・アメリカ・ドイツ・スウェーデンの「高齢者」を対象に比較調査を行ったもの。

 

 主な結果は以下。

 

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参照:ILC-Japan・国際長寿センター日本発行「われらニッポンの75歳」p.43, p46から引用。元データ:内閣府「平成27年度第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(調査対象は各国とも75~79歳)

 

 残念ながら、日本の高齢者は、『地域の活動に参加する人の割合がドイツ・スウェーデンの約半分』、『同居の家族以外に頼れる友人がドイツ・スウェーデン・アメリカの半分以下』、『親しい友人がいない割合が、同3国の倍以上』という結果です。

 

 もちろん、西欧諸国とは家族構成も違うでしょう。地域の活動に出なくても、親しい友人がいなくても、同居・別居の家族内でのつながりが強く、日本の高齢者はそこでの『つながり』を重視しているのかもしれません。

 ただ、これから高齢独居世帯、老老世帯などが増加することを考えると…、だからこそ今後はもっと地域の『つながり』が尊重されてもいいのかもしれません。

 

 とはいえ、これは『高齢者』を対象にした調査結果のお話。若者まで含めた調査結果はどうなのでしょうか。これが2つ目の調査結果。OECD(経済協力開発機構)によるものです。

 

 主な結果は以下。

 

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参照:「社会実情データ図録・社会的孤立の状況」http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/index.html元データ:Society at Glance : OECD Social Indicators-2005 Edition.

 

 こちらは年齢限定なしの結果。…やはり残念で意外な結果ですね。

 

『友人・同僚などとの付き合いが全くor めったにない』と答えた人が日本人が15%で20カ国中トップ!

 

 欧米各国といえば、『個』を重んじる『自由な社会』のイメージが強いですが、実は日本人よりもずっと『友人・同僚』などとの付き合いを重視しているようなのです。

 

 「社会的孤立」が、喫煙・肥満・過度な飲酒より健康に悪い!のならば、この結果は日本人が真摯に受け止めるべきものなのかもしれません。

 

 いや、健康に影響するとかしないとかそんな問題の前に、『孤独な人が多い』社会というものは、それ自体が健全なものではないのではないか?とも思えてきます。

 

 では、我々はどうすればいいのでしょう。

 

 実は、この問題を重要視し、改善に向けた実践をされている方々も日本には多くおられます。地域の『つながり』・『きずな』を重視し、それを『貯金』のように貯めていこう=地域に『きずな貯金』を貯めていこう、という取り組みはすでに、日本でも各所で行われているのです。今回はそんな、日本での取組みを少しご紹介します。

 

隣人祭り

 

 そもそもは、フランスのアタナーズ・ペリファンさんが、「地域で付き合いのない高齢者が孤独死していた」ことにショックを受け、「もう少し住民の間に触れ合いがあれば、悲劇は起こらなかったのではないか」と考えたことから始まりました。祭りと言ってもさして大掛かりなものでもなく、地域の人たちが食べ物や飲み物を持ち寄って集い、食事をしながら語り合う、ただそれだけです。年に一度のこの祭りの習慣、いまやヨーロッパを中心に29ヵ国、800万人が参加するそうです。

 

詳細は以下の本に詳しく載っています。

隣人祭り (ソトコト新書)  アタナーズ ペリファン (著), 南谷桂子 (著) 

 

 この流れは、日本でも始まっています。 すでに、『隣人祭り日本支部』http://www.rinjinmatsuri.jp/ が組織されています。また、渋谷区では隣人祭りからヒントを得て『渋谷おとなりサンデー』という企画が行われました。

 

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https://www.shibuya-otonari.jp/

 

 

 こちらのサイトを見る限り、当日は大盛況だったようですね。その他にも、「都会に田舎を作る」と地域の『きずな』をつないでおられる世田谷区の『せたカフェ』さん(http://seta-cafe.com/)などの例もあります。

 

 

 …考えてみれば、このブログでご紹介したこちらの2例も、地域の『きずな貯金』を貯める活動です。

 

 こちらと、

www.mnhrl-blog.com

 

      

 

親が認知症!?→ 疑い始めから要介護4まで…『自宅で独居』出来てます!その3つの秘訣とは。

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http://www.mnhrl-blog.com/entry/2017/6/30/arimurasan

 


 

 



 確かにこれらの活動は、ちょっと凄すぎ!常人離れしたもので、簡単には真似出来ない…と思います。確かにそうかもしれない。

 

 でも、僕らにも出来ることはたくさんあります。

 

もし、近所の人との関係が疎遠なのであれば、勇気を出して

「笑顔で挨拶」してみてはいかがでしょう?

 

もし、すでに近所の人と挨拶程度はできるけどそんなに付き合いはない、というなら

「旅行に行った時のお土産」を渡してみてはいかがでしょう?

 

お土産を持っていったら、そのうちお返しがもらえるかも。

そんなやり取りをしているうちに仲良くなってきたら、

その時勇気を出して

 

「ご近所で隣人祭りしてみませんか?」

 

と切り出してみたらどうでしょう?

近くの居酒屋で飲むだけでもいいのです。

 

 

 ま、そうは言っても、なかなか一朝一夕には行かないと思いますが(^_^;)。

 

 最期に、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ氏らが提唱する『きずな貯金』的な見解を紹介します。

 

「社会的なつながりをもつことで、暮らしの質が多くの面で向上する。最も楽しめる社会的諸活動の多くが社交をともなうものなのでより多くの社会的つながりがもっている人ほど、人生に高い満足度を見出している。」


参照:「社会実情データ図録・社会的孤立の状況」http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/index.html。元データ:ジョセフ・E.・スティグリッツ、ジャンポール・フィトゥシ、アマティア・セン「暮らしの質を測る―経済成長率を超える幸福度指標の提案 」金融財政事情研究会、原著2010年、p.83~84

 

 地域の『きずな貯金』が溜まっていくことで、

ご近所の高齢者の、そしてあなたの健康が保たれるなら、

その労は、決して高いコストではないような気がします。

 

 さあ、今日から『一歩』踏み出してみませんか?

 

 

  

  

 

秘密は… 『きずな貯金』

 

破綻からの奇蹟表紙画像

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財政破綻・医療崩壊・さらに高齢化率日本一。
悪条件に取り囲まれてしまった夕張市。
果たして夕張市民の命はどうなってしまうのか?‥。


破綻後に医師として乗り込んだ筆者は、
それでも夕張市民が笑顔で生活していたことに驚く。
事実、財政破綻後のデータは夕張市民に
健康被害が出ていないことを示していた。

「病院がなくなっても市民は幸せに暮らせる! 」

もしそれが事実なら、一体なぜなのか?

本書は、その要因について、先生(元夕張市立診療所所長)と
生徒2人の講義形式でわかりやすく検証してゆく。
夕張・日本・世界の様々なデータを鳥の目で俯瞰し、
また夕張の患者さんの物語を虫の目で聴取するうちに3人は、
夕張市民が達成した奇蹟と、その秘密を知ることとなる・・。

少子高齢化や財政赤字で先行きが不透明な日本。
本書は、医学的・経済学的な見地から日本の
明るい未来への処方箋を提示する希望の書である。

 

森田洋之 著

 

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親が認知症!?((;゚Д゚)) → 疑い始めから要介護4まで…『自宅で独居』出来てます(๑•̀ㅂ•́)و✧!その3つの秘訣とは。

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 お悩み相談

60代主婦です。最近、田舎で一人暮らしの母(88歳)の物忘れが激しくなってきています。約束をすっかり忘れてしまったり、財布の置き場所がわからなくなって探し回ったり、タマゴがあるのを忘れてまた買ってしまい、冷蔵庫にタマゴが何パックもあったり、そんなことが続いていて心配しています。兄弟の話の中では「今のうちに高齢者施設などに移ってもらったほうが安心」という話も出てきています。長年住みなれた家だし、ご近所さんとも仲がいいので、母は嫌がると思いますが…。こんな時、どうすればいいのでしょうか?

 

 

 

登場人物

 

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森田先生:とりあえず何でも診る総合診療(プライマリ・ケア)の医師。40代。

 

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Yさん:2人の子を持つ30代専業主婦。元病院看護師。

 

 

 

 

森田「今回は認知症気味?の遠方のお母さんのご相談ですね。」

 

Yさん「娘さんの気持ち、よく分かるわ〜。家族としてはこのまま一人暮らしは不安。施設に入ってもらったほうが安心。…でも、本人はなかなかね〜。…って、あれ?先生、この相談この前やったわよね。マンガで解説!って回で。」

 

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 ↓ ↓ ↓

 

 

森田「そうそう、実はそうなんです(笑)。そうなんですけどね。このお話は結構重要なテーマなので、もう一回やりたいな〜って思ってまして、そしたら、これの解説にちょうどいいお話があったので、皆さんに紹介しようかと思いまして。」

 

Yさん「へ〜、どんな話?」

 

森田「鹿児島で理学療法士をしておられる、有村宣彦さんと、お母さんのお話です。ちょうどこの相談のように、認知症で独居。次第に幻視などの症状が重くなってきて…どうしようか悩んで、でもお母さんの気持も大切にしたい!で、現在要介護4の重度認知症まで進行しているのに…たまに警察のお世話にもなっているのに…今でも自宅で独居が継続出来てますよ。という…そんなお話です。」

 

Yさん「え〜!?、ちょっとそれ危ないんじゃない?。認知症の要介護4で独居?警察にも?…家族と同居ならまだわかるけど。。」

 

森田「そうですよね。Yさんは看護師さんだから、こうした方が普通ならどうなるか、というところまでご存知だと思います。知っているからこそ、そう言われるのだと思います。ま、でもとにかく、この話がどうゆうことなのか、話を聞いてみないと分からないですよね。そこには3つの秘訣があるということです。」

 

Yさん「そうね。ま、聞いてみましょうか。」

 

 

 有村さんの場合。 

 

 


『そこに誰かいるがね』

有村さん「4年前、突然電話がかかってきたんです。『家に男の人が住み着いている』って。…本当なら大事ですよね(笑)。何か事件に巻き込まれてるんじゃないか?と不安になりながら実家に駆けつけると、母は普通にそこに居て、でもテーブルにはカレーが2皿準備されていて…母はその男の人の分も準備してたんですね(笑)。それが始まりでした。その後、よくある『お金がないと言って探し回る』とか『11月に蚊取り線香を焚く』とか。色々症状が出だして…正式に『レビー小体型認知症』と診断されるわけです。その診断が出る頃には幻視もかなり強くなり、『ここは合宿所か!』と思うほど大量の食事を作ったりしてました(笑)。」

 

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有村さんのお母さんにはこのクッションが『人』に見え、『そこに誰かいるがね』となる。

 


有村さん「やはり一番厄介な症状は幻視です。鏡に映る自分が他人に見えて、ずっと話しかけるんです。なので、家の鏡は、ビミョーに顔が見えないように(笑)…こうしました。」

 

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有村さん「『2階にいるおじさんが下着を盗むから、隠しておく』なんて言い出したり、布団も何人分も敷いたり。他人?なのに食事も作って寝床も準備して…ある意味優しい人ですよね(笑)。まあ大変でした。症状も波があり、いいときは『物忘れの多いただのオバサン』なのですが、症状が強くでているときはもう何をやってもダメでした。」

 

 
「どこにも行かない、ここで1人で住む」

有村さん「そんな状況でも母は『病気でもないのに薬なんて飲む必要ない!』と言って服薬を拒否していました。認知症ではよくあることですよね。恥ずかしながら、イライラして私が母に薬を投げつけてしまったこともありました。…しかも、母の希望は一貫して変わらず、「どこにも行かない、ここで1人で住む」です(笑)。自宅に居たいのなら、家族としては、『訪問介護やデイサービスなど、介護保険のサービス』を利用して欲しいところですよね。でも母は『私はきちんと生活している。絶対に利用しない!』の一点張り…もう笑えません(笑)。いや本当は、生活だって出来てないんですよ。スーパーへ行くにしても、道順も品物もお金の計算も全部わからない。食事だって、料理の手順から食器の選択から調理器具の扱いから、全部分からない。入浴だって、『浴室に誰かいる』から始まって『浴室の窓と隣の家がつながっている』とか言い出して…。」


『地域に頼る〜実家で認知症カフェ〜』


有村さん「正直なところ、『もうどうにもならない!』と悩んでいました。母の希望ではないけど、なんとか説得して、ある意味騙してまでも…施設入所を考えたこともありました。でもある時、実はご近所の方々がさり気なく母をサポートしてくれていた事を知ったんです。『伸びていた庭木を切ってくれる』とか『食事を持って来てくれる』とか『散歩(徘徊?)中も声をかけてくれる』とか…。母は、老人クラブや町内会の婦人部にもしっかりと顔を出していたので、皆さん実は気にかけていてくれたんですね。…とはいえ、奇異な行動が目立つ母です。もしかしたら、逆に近所で変な噂が流れているかもしれない。…いや、だからこそ、近所の方々には母についての正しい情報を知っていて欲しい。認知症に対する正確な情報も知っていてほしい。母には近所の方々との関わりをなくしてほしくない。そう思うようになりました。…そこで、実家のすぐそばにある『デイサービスおたふく』さんに相談しました。母曰く「(デイサービスには)行きたくないけど、来てくれるのはいい」と(笑)。だったら、近所の方々、民生委員さん、おたふくのスタッフさんなど、みんなに『実家』に集まってもらって、『認知症カフェ』を開催しちゃえばいい、という話になりました。」

 

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自宅で認知症カフェ。近所の方にお母さんのことを説明する有村さん。

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ご近所のみなさんも軽食を食べながら。

 


有村さん「当日は、私が母の症状を説明し、母も思いを語り、また逆に近所の方々からも『おたふく』さんへの相談事が出てきたり、とても盛り上げりました。やはり、ご近所の方々も母の事を密かに心配してくださっていたんですね。でもこういうことって、他人から『大丈夫?』ってなかなか言い出しにくいですよね。ですので、近所の方々からも『こうしてお母さんの事をしっかり説明してくれてありがとう』『私達も協力するわ』という声をたくさん頂けました。このことには、本当に勇気をいただきました。

 

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心配してくれていたご近所の方々と握手。

 


有村さん「当初は母もまだ要介護1でした。でも今は、要介護4(最高は5まで)です。認知症の症状ももちろん進行しています。この前は、雨の中を徘徊していた母を保護した警察から電話がありました。さすがにもうだめか!と思いましたね。あとから聞いたんですが、実はこれまでにも、散歩(徘徊?)の途中にご近所の方が声をかけていただいて自宅に連れ戻してくれていたり、私の耳には届かないような未遂事件?が何回もあったそうなんです。あらためて、ご近所の方々の、さりげないサポートを受けているからこその独居生活なんだな、ということを実感しました。

 今、それでも母は…、訪問看護も受けながら、「おたふく」さんには週4回通いながら、自宅で生活しています。

 要介護4の今の状況で、母の希望通りの自宅生活(独居)が出来ているのは本当にありがたいことです。それが母の希望ですから。なぜそんな事が出来るのか…。それは、もちろん訪問看護やデイサービスのおかげ、ではあるわけですが、大元をたどれば、やはりこの状況の根底には、『地域の方々の暖かな理解・眼差し』、また、『孤立しそうになっていた我々家族』と『地域の方々』をつないでくれた、『認知症カフェ』とそれを開いてくれた『デイサービスおたふく』さんの存在が大きくあるのではないか、と思っています。」

 

 

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「デイサービスおたふく」のスタッフと。


独居を見守る家族、その3つの秘訣。

有村さん「要介護4で独居なんて、『そんな危険なことを!』と思われる方もおられるかもしれません。確かに、この状態がいつまで続くかはわかりません。明日、施設入所の申込みをしているかもしれません。でも、なんとか母の想いを、「自宅に居たい」というその気持ちを大事にしたいとも思っています。そのためには、母のことを、地域に、世間に『隠しません!』。ご近所さんにも、訪問看護さんにもデイサービスにも、どんどん『頼ります!(自分だけで)頑張りません!』。そして頼るために『発信します!』。この3つが、私のようなダメ息子が思いつく、『母を守る方法』なんです。」

 

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お弁当を配達してくれた「おたふく」の水口さんと 。

 

 


Yさん「は〜、また有村さん、すごい人ね。私も一応看護師だけど、こんなこと考えつかないわ!」

 

森田「そうですね。有村さんのどの辺が普通と違うのか。有村さんも言っておられる3つのポイントじゃないかな。と思います。」

 

Yさん「え〜…これね。『隠しません!』『頼ります!(自分だけで)頑張りません!』『発信します!』の3つね。以前紹介があった、熊谷先生の『依存先を増やす』にちょっと似てるわね。」

 

詳細はこちら

 ↓ ↓ ↓

 

 

 

森田「そうですね。自戒を込めてですが、我々医療従事者は、医療的なこととかはよく勉強しますが、この辺りのことは疎いですよね…。」

 

Yさん「うっ!確かに!『ご近所へ隠さない、頼る、発信する!』、なんて学校でも病院でも習わないもん。私だったら、ご近所には『隠す』かも…ましてや『発信』なんて絶対しないかも…」

 

森田「そうですよね。有村さんのお母さんが要介護4なのに、希望通りの『自宅生活(独居)』ができている背景には、有村さんのそうした思い切った姿勢があるのかもしれないですね。」

 

Yさん「でも、みんなが出来ることじゃないわよね〜。」

 

森田「そうですね。一番最初の『お悩み相談』も、状況は有村さんと似ていますが…、だからと言ってなかなか真似できるものではないですよね。認知症と言っても、いろいろで、一概にこれが正解!とも言えないわけで、真似すればいいとも言えないですし。ま、でもたとえみんなが『出来る』ことじゃないとしても、こうした方法があると『知って』おいてもいいのかな、と。」

 

Yさん「ま、そうね。」

 

森田「この『自宅で認知症カフェ』、これまで有村さんとデイサービスおたふくさんで3〜4回実施してきたそうです。ご近所からの評判も良くて、『私のときもこうしたらいいのね』とか『認知症の方って、こうして普通に生活できるのね。抵抗がなくなったわ。』などと、とてもいい反応を頂いているそうで、今後も継続予定らしいですよ。」

 

Yさん「へ〜、『自分たちのため』だけでなく、そうした『周囲への影響』、という意味でも素晴らしい取り組みなのね。」

 

森田「そうですね。なかなか出来ることではないかもしれないですけど。こうした事例から、我々もどんどん学んでいきたいですね。」

 

 

 

有村さんの爆笑講演を聞いてみませんか?講演依頼はこちらまで。

    ↓ ↓ ↓

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https://www.mnhrl.com/contact/

 

 

 

有村さん、デイサービス「おたふく」の水口さん、森田も参加しているのが、『鹿児島医療介護塾』です。塾の勉強とつながりの中から、こうした取り組みが生まれています。興味のある方は是非ご参加ください!

     ↓ ↓ ↓

 

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http://bit.ly/2tvOiEy

 

 

 

  

  

 

未来に残すべき『価値あるアイデア』を。  

   

あおいけあ流介護の世界表紙画像

 

爺ちゃん婆ちゃんが輝いてる! 職員がほとんど辞めない!

施設で職員の結婚式も! 最期は家族のようにお看取りまで…

…辛い・暗いの介護のイメージをくつがえす

「あおいけあ」流介護の世界。

加藤忠相を講師に迎えた講義形式で展開

される講義の受講生はおなじみのYさんとN君。

マンガ・コラム・スタッフへのインタビューなど

盛りだくさんの内容でお送りする、

まさにこれが目からウロコの次世代介護スタイル。

超高齢化社会も、これがあれば怖くない!

 

森田洋之・加藤忠相 著

 

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破綻からの奇蹟表紙画像

★★★★★★★★★

日本医学ジャーナリスト協会 優秀賞受賞作品(2016)

★★★★★★★★★

 

財政破綻により病院がなくなってしまった夕張市、

しかも高齢化率は市として日本一。

果たして夕張市民の命はどうなってしまうのか?‥。

しかし財政破綻後のデータは、夕張市民に健康被害が

出ていないことを示していた。

事実、夕張市民は笑顔で生活していた。

「病院がなくなっても市民は幸せに暮らせる! 」

それが事実なら、それはなぜなのか?

本書は、その要因について、先生(元夕張市立診療所所長)と

生徒2人の講義形式でわかりやすく検証してゆく。

夕張・日本・世界の様々なデータを鳥の目で俯瞰し、

また夕張の患者さんの物語を虫の目で聴取するうちに3人は、

夕張市民が達成した奇蹟と、その秘密を知ることとなる・・。

少子高齢化や財政赤字で先行きが不透明な日本。

本書は、医学的・経済学的な見地から

医療・介護・地域社会の問題を鮮やかに描き出し、

日本の明るい未来への処方箋を提示する希望の書である。

 

森田洋之 著

 

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